ゆびわのかわり
*歴史が好きな女の子。
*頭はいい方。体力はそれなり。
審神者:資格制。先天的な才能の有無に左右される。
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最初に選んだのは"前"と一緒で、加州清光という刀。
狐の子が並べた刀剣の中から彼を選んで、すっと目を閉じる。
命を、自ら戦う力をこの子にさずけて。
そう祈った私の目の前に現れたのは、綺麗な顔とちょっと低めのテンション、それから真っ赤な爪紅が印象的な男の子だった。
『あー…川の下の子です。加州清光。よろしくね』
『沖田さんの刀だった子だよね。よろしく』
『…前の主みたいに、途中で置いていかないでよね』
『だーいじょうぶだよ。最後まで一緒に行こう』
そんな風に始まった彼と私との関係は、今やなんとも形容しがたいものである。
「あーるじ!ねーねー爪やって」
「あのねぇ。今から鍛刀を頼みに行くって言ったでしょ」
「いいじゃんいいじゃん、後回し!ね、ね、可愛くしてよ」
「加州くんってば、毎回そうやって鍛刀を後回しにさせてない…?」
「主ー、はやくー」
「ああもうしょうがないなぁ」
私が了承の言葉を吐き出すと同時に、加州くんは正座していた私の腿の上にごろんと寝転がる。そうして仰向けになりながら、私に手をあずけ爪を塗らせるのだ。
「まにきゅあって奴は、やっぱり楽だねぇ」
「科学の進歩だね」
「お花の絵いれてよ。可愛いやつ」
「また面倒くさい注文を…」
「薬指だけでいいから」
「薬指ー?なんでまた」
「へへ、内緒。あ、俺の乾いたら、俺が主の分やってあげる!」
「それはいいから鍛刀に…」
「やってあげる!」
「…はいはい。ありがとね」
加州くんの薬指の爪に、なんとなく咲かせたのは結局椿の花だった。別にマニキュアの専門なわけでもないから多少不格好なのはご愛嬌だ。そんな歪んだ椿でも、加州くんは嬉しそうに「かわいー!」と笑ってくれたからいいのである。
結局加州くんが私の爪のデコレーションに取り掛かったのは彼が私の膝で一眠りしたあとで、お揃いの椿の花が乾く時間のことを考えると、その日の鍛刀はもう諦める他なかったのだった。
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