I lead you



私が廊下を歩いていると、仁王くんがすこし離れたところで友達と話しているのが見えた。
白い髪―本人いわく、銀髪―が、窓から差し込む光を受けていっそ神々しいぐらい綺麗に輝く。いつものことだ。

後ろから名前を呼ばれる。振り返る。同じクラスの友達が、私に話しかけてきた。
その友達に、特に理由も脈絡もなく抱きつかれる。いつものことだ。


私と友達は、午後にある体育の授業について愚痴って、今日の昼食を食べる場所を提案しあう。
今日は、隣の暮らすのあの子も誘って中庭がいい、だとか、部室でヒーター入れながら食べるのがいい、だとか。
今日は少し気温が低いから、少しだけいつもと違う会話になる。


私と友達は、結局二人きりで部室に行くことを決めて、揃って歩き出す。

ふと先ほどの場所を見ると、もうそこに仁王くんとその友達の姿はなかった。そのことにがっかりと失望を覚える自分がいる。そういうのはときどきある。いつものことだ。


仁王くんのクラスの前を通るとき、首をさらりと横に向けて中の様子を覗いてみる。

廊下と教室では、まるでそこに大きな段差か分厚い石の壁があるみたいに、それぞれ違った世界を織り成していた。
一歩踏み入れれば簡単に干渉できる異世界。
小さいことだけれど、教室は暖かそうだった。


くるりと一通り見回す最後、自分の視線が異世界の仁王のものとぶつかった。
たとえ視線が音を作るものだったとしても、何の音も鳴りそうにない、柔らかな衝突だった。

驚いて目をぱちりと二回瞬かせる私をみて、仁王はゆっくりと笑う。
それに私も笑い返した。


  

(そのとき、世界は確かにつながった)



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ふとした瞬間に合う視線がとても嬉しいということ。

11/12/11 2010年仁王生誕祭より移動


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