先生と恋をする!3
*欠点ギリギリでも欠らなけりゃこっちのもの
本日は、生徒が年に数回は必ず経験する、テスト返却という大イベントである。
私が得意とする文系科目は午前中にほぼ返って来てしまって、あとは理系の燦々たる結果を見るばかりとなった。心底、帰りたい。
「んじゃ、テスト返すぜよ」
奇遇にも学年であまり成績のよくない者が集まる我がクラスの心は一つ。
―今ここで何らかの不幸な事故が起こって、仁王先生が苦労して丸つけしたであろう答案が紛失してしまえ、だ。
起こらない奇跡こそ、皆で祈って実現させるべきだと私は思う。
「出席番号順に取りきんしゃい。1ばーん」
しかし、私の、ひいてはクラスメイト全員の願い虚しく、仁王先生はいつものあの気だるげな動きでテストを返却し始めてしまった。
「次ー、ミョウジー」
「・・はーい」
「んー・・・お前さん、無駄に運がええのぅ」
「はい?」
少し悔しそうな色を持たせながら、先生がわざわざピラリと翻し寄越した解答用紙には、赤ペンで「41」の文字。
私の通う立海大付属中が赤点とするのは、39点以下。
「やった!セーフ!」
「なーにが『セーフ!』じゃ。もっと勉強しんしゃい」
「えっへー。すみませーん」
「ったく。ほい次の奴、取りこい」
しかし、なんといわれようとも黒点なのである。
中学の平常点など大して気にも留めていない私からすれば、40点以上はイコールで合格点と結ばれるのだ。
赤点をとらなかったのだから、今回のテストに反省すべき点は無いと断言しても良いくらいだ。
だから、仁王先生の呆れた顔とか、そんなのは全く以って意に介すべからず、である。
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