それが、癖ですので。



休日、ベッドの上。
私は壁に背を預けていて、膝には銀色の頭があった。

いつもとは少し違う彼の様子に、どうしたの、と聞けば、べつになんにもと返って来た。

だから私はそれ以上なにも聞かずに、ふうんと答えて銀色をかき混ぜた。

私はただ、この銀色のもふもふを愛でることが出来れば、それ以上のことは望まないのだ。


「何でなんも聞かんの」


彼は不満げに口を尖らせた。


「だって雅治が、なんにもっていったから」

「でも、普通気にするじゃろ」


自身はどこまでも天邪鬼であるのに、自分を相手する人間には常に普通を求めるのが、彼の悪い癖だ。

そして今もやっているが、不満があるときに人の身体に自分の顔をこすり付けるのも彼の癖。しかしこれは見ていてとてもかわいいので、キライではない。


「じゃあ聞いてあげるね」

「ん」

「なんで雅治は浮気したの?」

「ん、なんとなく」


ほらみろ。聞いてみたって、どうせ答えはこれなんだ。
彼は聞いて聞いてとせがむくせに、その質問に対する答えは常に決まっている。これも、彼の癖。


「あ、そ」

「ん」


これはもう悪癖といってもよいだろうが、彼はよく知らない女の子と浮気をする。まるでこちらに見せ付けるかのように、彼は頬を仄かに染めた女の子と唇を合わせるのだ。


私という列記とした恋人がいながら、と思わないわけではないが、私にとってそれはさほど重要なことでもなかったし、ショックを受けるべきものでもなかった。


「・・・嫉妬した?」

「いや、あんまり」


だって、一番近くで彼を愛でることができているのは、やはり私なのだ。

そしてそれは私にとって、彼に愛されるよりも大切なことで、私は今とても幸せだ。


「かわいいね、雅治」

「・・・ピヨ」


ヒヨコのように鳴く彼は、しきりに私のお腹に顔をこすり付けていた。





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2.3倍クールな女の子(当社比)と、彼女にもうちょっと分かりやすく愛してもらいたい仁王の癖について。

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