参
いよいよ秋も深まる今日この頃。
コノハ、と名乗った少女と暮らし始めて一ヶ月と少しが経とうとしていた。
一言で言えば、コノハちゃんはよく気がつくいい子だ。
この子と一緒に住むようになってから、僕の生活は格段に一般人のそれと近く、健康的になったと思う。
毎朝苦手だろう早起きをして朝食を作ってくれるし、僕が帰ってくれば暖かな夕餉の香りを身に纏って、笑顔で出迎えてくれる。
そんな日々が続くにつれて、もし彼女がホウオウと無関係だったとしても、家において良いと思えるくらいには、僕は彼女のことを気に入りはじめていた。
「あ、マツバさん」
「コノハちゃん、」
「今日はジムおやすみなんですよね?お夕飯はいつもの時間で大丈夫ですか?」
「ああ、うん。ごめんね、今日くらい手伝うよ」
「いいえー。せっかくのおやすみですから、ゆっくりしてください!」
そういいながら、洗濯物を腕にいっぱいに抱えて、こちらに笑いかけてくる少女に笑い返し、その腕にある荷物を奪い取る。
あ!と言いながら取り返そうとするコノハちゃんに、これくらいさせてよ、といって困った風を装うと、彼女はもごもごと何かいいながらも、最後には「ありがとうございます」と、小さな声でいって頭を下げた。その様子を見て、僕はまた笑う。
初めて会ったときにはなかなか見ることがなかった明るい笑顔を、最近彼女はよく零すようになった。
元来明るい性格なのだろう、みているこっちまでほっとするような、優しくて力強い笑顔だ。
なんだか、いいなぁ。
久しく感じていなかった、心休まる気持ちがした。
「マツバさん?なにかいいことでも?」
「ん?んー、そうだね。少し」
「それはよかったっ」
本当にうれしそうに笑う、コノハちゃん。
彼女が持っていたホウオウの羽は、僕が預からせてもらっている。
もちろん最初はホウオウありきで、無条件に君を受け入れていたわけではない、けれど。
今は、君に会えてよかったと、心から思っているよ。
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