いち


最近は割と夢見が悪いことが多かった。
落ちたり、食べられたり、撃たれたり。毎度死ぬ寸前までいき、そしてその「寸前」でいつも誰かが私を助けてくれる。
その命の恩人について思い出せるのは極彩色のなにかと金色の髪だけだが、何分夢の中でのことなので、それだけ覚えているだけでも上等である。


「・・・ふー、また此処か」


今私は、またしても夢の中に居る。

いつも私はここで怖い目に遭い、誰かに助けてもらう。そしてその人がなにか言おうとするところで、目を覚ますのだ。だから今回もまたそのパターンな筈・・・

と、高をくくっていたのがいけなかったのかなんなのか、今回は相手もニューバージョンを用意してきたらしかった。



「放置プレイってやつですか…」


今回に限っては、何も起こらないのだ。

10分待とうが、20分待とうが、視界には何の変化も現れない。いつもならばこの
いい加減帰りたいと思っても、私は目を覚ます以外にこの場から逃れる方法を知らず、更に私は今まで自分の意思で夢から目を覚ましたことなど一度も無い。よって、帰る手段はナシ。ただただ此処で時間がたつのを待つしかないわけである。


「・・うむ、仕方ない。寝るか!」


夢の中で寝るというのも不思議だが、わたしの頭が不思議なのは今に始まったことではないので、気にしないでほしい。


ゆっくりと瞼を閉じると、そこでようやく周りの風が動いたような気がして、慌てて目を開こうとした。が、その目を覆う大きな手。


「起きなくていいから。おやすみ」


あぁ、この人はいつも私を助けてくれる人なのかと。なんの根拠もなく確信した。


「俺の代わりに、彼をよろしくな。・・・あー、『選んでやれなくてスマン』って、言っといてくれ」


そんなに申し訳なさそうな声を出すなら、直接謝ればいいのに。そう思ったけれど、口は動かなかった。それほどに、何もしたくないほどに、眠たくなっていたのだ。



「じゃあな」



その声を最後に、私は夢の中で眠りについた。





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