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はーいどうもトリップ少女(仮)なマコトさんです。
実際の年齢は少女っていう年でもないんですけど、なぜだか若返っているらしい私はせいぜい中学生くらいだろうか。むしろそこまで行ってないかもしれない。つまりは正真正銘のロリっこだ。恐れを知らぬ戦士なのだ。

さて、木炭職人弟子の勧めに従ってポケセンへと行ってきた私ですよ。ヒワダなんていうちっさい町、探すまでもなく見つかった赤と白のポケモンセンターで、ひとまず私はジョーイさんを遠くから眺めて堪能した。つぎに二階に上がって吹き抜けのような構造になっている一階を見下ろし、ジョーイさんの頭頂部や上空からのビジョンを楽しんだ。そこまでしてようやく満足いった私は、正々堂々正面へまわり、にこにことやさしげな笑みを浮かべているジョーイさんに話しかけたのだった。


「あのー」

「はい、なにかご用でしょうか?」

「マコト、という人物の詳細データを見ることってできますか?」

「失礼ですが、その方との関係と、身分を証明できるものを提示していただけますでしょうか」

「あ、本人なんです。…これ、トレーナーズカードです」

「え!あ、失礼いたしました!・・・たしかにご本人のようですね。それでは少々お待ちください」


どういうシステムになっているのかわからんが、ジョーイさんは私のIDをメモると、奥へと引っ込んだ。
うーむ、やはり本人が自分の情報提示を求めるのは異例なようである。一瞬いぶかしげな眼で見られてしまった。それでものっけから「私記憶喪失なんです」ともいえない。辛いね。


「マコトさま、お待たせいたしました!こちらがIDカードになります」

「・・・えっと」

「ご利用になるのは初めてですか?よろしければ説明いたしましょうか」

「お、お願いします・・・」

「はい」


そもそもIDカードとはなんぞや、とバカ丸出しな私の様子を察したのか、助け舟が出された。
それにうなずくと、にこっ、と0円なまばゆいスマイルを披露したのち、ジョーイさんはカウンターから出てきて私を例のパソコンのほうへと導いた。


「IDカードを使用したいときは、こちらのパソコンを用います。ここに、読み取り口がありますでしょう?そちらにこのようにカードをセットすると・・・あ、出ましたね」


ここにとかこのようにとか、ラジオ講座だったら絶対に伝わらない言い回しで説明を加えながら、あっさりと私の個人情報を開いてくれたジョーイさん。ありがとうございます、とジョーイさんを見習った営業スマイルでお礼を言うと、彼女はいえいえ、と笑いながらパソコン画面を見つめた。


「それにしても・・・これだけのことをやっている凄腕のトレーナーの方なのに、IDカードを使ったことはなかったんですね」

「ああ、記憶喪失なんです」

「そうですか、記憶喪失・・・、っ記憶喪失なんですか?!」


にこ、とさりげなく流そうとした私につられてさらりと聞き流そうとしたジョーイさんが、我に返って目を剥いた。そらそうだわ。記憶喪失なんて言われたらまず疑うわ。まずまっとうな人間かどうか試してから話を聞くわ。


「そ、そんな!大事じゃないですか!」

「ええ、名前と、このトレーナーズカード以外の手がかりがなくて。お手数おかけいたします・・・」

「しかしそれなら、これをみたところでよくわかりませんよね・・・」

「そうですね・・・まあ、行き当たりばったり、もう一回旅をしてみようと思います」


そのままいくつかこの世界の常識、とくにポケモンセンターに関することを聞き、私は最後まで不安げなジョーイさんに見送られながら施設を出た。



不肖五月雨マコト、成り行きによりこのジョウト地方を一から回ってみようと思います!




___________________
<解説>
*IDカード…個人情報がつまったICカード。ポケセンにあるパソコンでのみ読み取って情報を閲覧することができる。使用期限は発行日当日のみとなっていて、個人情報漏えいに関しては抜かりない。

*ポケセンのシステム…ゲームでみられる施設の裏に、宿泊棟というものを設けている。トレーナーズカードさえ提示すれば無料で宿泊可能。食事も基本無料だが、ポケフード等の嗜好品などには別途料金が必要。

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