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私、わるくなくね?
それが、私が死に際に思ったことでありかつ今も思っていることである。

どうも、嫉妬にまみれた女に刺されて死んだと思ったらなんだか突然森の中に放り出されてた五月雨マコトです。以後お見知り置きをよろしくどうぞ。

罪無き少女に神はなんたる仕打ちをするのだろうか。クズ人間と言われることはあっても、少なくとも犯罪を犯したことはないぞ。理由なく人を傷つけたりしたこともないし。そんな私をこんな緑豊かな土地に放り出して、いったいなにがどうなっているのやら。ふう。


「とにかく、街らしいところに出たい………」


動き回るのも危険な気はするが、だからといってこんな森の中では人が通りかかるのを待つのも不安になる。幸い申し訳程度に舗装されている道が近くに見えるので、あれをたどればいつかは町にたどり着くだろう。

さあて、と重い腰を上げようとしてふと隣を見ると、


「………ネギ?」


違う今のは私の声じゃない。
隣にいたネギ持った変なトリが鳴いたんだ。

やたらときりりとした顔面を持っているそのトリは、私をしっかりとみつめるともう一度「ネギッ!」と鳴いた。残念ながら全く意味が分からない。呆然とする私にむかって、今度は少し怒ったように鳴く。いや、わかんねーよ。無茶だよ。ていうかトリなのにネギっていう鳴き声どうなの、ご丁寧にネギ背負ってさ。食べられたいの?食材用に心身ともに育成されたトリなのかしら。ならこれ、あるかもしれない野宿に備えて捕らえて良い?なんてったって食料は大事だ。

怪しい思考が伝わったのか、トリは慌てたように私の手を引っ張ってどこかへ進みたがった。別に逆らう必要もないかなと考えた私は、導かれるがままについていく。

そうして5分くらい歩いたその先には、たくましい体躯のお兄さんたちが立っていた。


人だ!と言ってそのトリを抱えて走り出した私は、腕の中で誇らしげな顔をする命の恩人を一時食料扱いしたことを深く反省するのだった。トリは見かけによらないよね!


  森の中の救世主

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