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ふぁ、とあくびをひとつこぼしながら歩くのはつながりのどうくつ。
すべてのジムバッジを持っている身には当然なみのりだってなんだってござれなので、こういうダンジョン攻略に困ることはない。
今日は金曜日でもないので、つながりのどうくつなぞという山男と火吹き野郎しかいないような岩山に用はないのだが、かわいいかわいいアレブに洞窟というものを見せるただそのためだけに私は靴紐を結びなおしたのだった。
この間のカノンとのバトルでアレブを下げたこと、それはいたく彼のプライドを刺激したらしかった。
戦った後に思ってみればたしかに初心者同然といってもいい腕前の彼女だったので、アレブでも十分戦いきれただろう。
しかし、あいつはたとえ世界が変わろうとも私を殺した女。油断はできなかった。
バトルには勝てても、逆上したあいつがなにか危害を加えてこないとも限らない。
だから、完膚なきまでに倒せて、かつその後のアクシデントにも対応できるユズちゃんに出てもらったわけだが・・・。
「アレブー、たのしい?」
「ヒィーノー」
「まだご機嫌なおしてくれない?」
アレブは何もいわずに、背中からぶわっと炎を出した。
まだまだ根は深そうだ。
「もうすぐで洞窟ぬけて、そしたら次は森だからね」
そう言えば、ちょっとだけうれしそうな顔をしたあと、慌ててぷいっと顔をそらしてしまった。なにこのこ超かわいい。
「あ、そろそろ出口が、」
「おい、そこのお前!」
突然後ろから声変わり前の少年の、すごく失礼な呼びかけが聞こえてきた。
周りには私たち以外いないので、おそらく私のことだろうと思いながら腹が立ったのであえて無視して洞窟の出口へと進んでいると、ぐいっと肩をつかまれる。
「おい、聞こえてんだろ」
「…はぁ」
「そのヒノアラシ…お前が、あいつの言ってたトレーナーだな」
指示語が多すぎてわからん。
変わらずシカト決め込んでる私に構わず、相手は勝手にヒートアップしていく。
なんだこいつめんどくさそうな匂いがプンプンするぜ。
「おれと、勝負しろ!」
ズタッターズタッター、トゥルルルルルルルルルルル!
ライバルが勝負を仕掛けてきた!
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