19


あまりにもあっけなく終わった勝負。

どう?すごかったでしょ?とばかりに胸を張って得意げに近寄ってきたユズちゃんのそのふわふわな毛並みを撫でながら、私は目の前で呆然としているカノンを見る。


「チコリータの手当しないと、危険ですよ」

「………して…」

「え?」

「どうしてよ!!どうして私が負けるの?!私は、選ばれた存在なのよ!?」

「は、はぁ…」

「…覚えてなさいよ!!」


三下のような捨てセリフを残して、瀕死のチコリータのボールとともにカノンは去って行った。


「…まるで魔女だねぇ」


こーん、と一声、うなずくようにユズちゃんが返事をする。

ユズちゃんも、怪我は負ってないものの、PPは削られてるはずだから、食事が終わったら彼女もポケセンに連れて行こう。


にしても、『選ばれた存在』とは…大きなことを言う。
あいつが選ばれた存在だとしたら、私はいったい何なのだろうか。

ふとアンノーンたちの言葉を思い出す。


――『喚ばれし者』。『救い』、『害』を『返す』ために喚ばれた存在。


害っていったい何のことなのだろう。
この世界の害と言ったら、ロケット団とかギンガ団とか、そういう犯罪組織しか思いつかないが、あいつらは主人公なる人物たちが解体するはず。
なら、私が返す害とは…?


「コーン!」

「っと…ごめんね、おなかすいたよね」


太ももを鼻先でつついて抗議してきたユズちゃんに従い、とりあえず食事にすることと相成った。

散らかした食堂は…まあ後で掃除しよう。





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