18
ポケセンから少し離れた人気のない空き地で、私たちは少し距離を開けて対峙していた。
カノンの手には、チコリータの入ったモンスターボール。対する私は、まだポケモンを決めかねていた。
どの子にこの戦いを任せようか、悩みどころである。
「・・・手加減は欲しいですか?」
「は?バカ言わないでよ、そんなもんなくたって私が勝つに決まってるでしょ?」
一応、負かされるほうの意見も聞いといてあげようと思ったけれど、いらない気遣いだったようだ。
ならば遠慮も手加減もしない。
私は一つのボールを手に取って、にやりと笑って見せた。
「さあ、始めましょうか」
私のその言葉を合図とし、二人同時にボールを投げた。
二つの赤い閃光。一つはもちろんチコリータ。そしてもう一つは・・・
「い、色違いキュウコン・・・?」
私の手持ちの中でも一、二を争うほどの美しい毛並みを持つ、銀色キュウコンたん(♀)だ。
「ユズちゃんです。完膚なきまでに燃やし尽くしてくれるでしょう」
「っ、わたしがまけるはずない!チコリータ、はっぱカッター!」
「ユズちゃん」
名前を呼ぶと、ユズちゃんことキュウコンさんはわかったとでもいうようにこくりと首を縦に振り、しっぽを優雅に振って見せた。
たったそれだけ。
それだけで、チコリータの放った初撃の葉っぱはいとも簡単に薙ぎ払われてしまったのだ。
カノンさんも呆然としているが、私だってそれは同じだった。
うちの子TUEEEEEEEE!!!
なにあれ、今のなに?!しっぽをふる?!しっぽをふるだったのユズたんんん!!!
優雅すぎるし美しいしなにより強いしでもう私はどうしたらいいのかわからない!笑ってたらいいのかしら!!もうきれいで強いってそれ最強じゃん!
そして、今の今まで忘れていたが、そういえばポケモンたちは技をいくつでも覚えられるという違いがあったのだった。調べたところによると公式戦で使っていい技は四つまでだと指定されているらしいが、このような野良試合なら別だそうだ。つまり、ここはすでにもう私のキュウコンの狩場だということですはい。
「な、なによ今の・・・」
「ユズちゃん、あやしいひかり」
その技は、状況についていけずに主人とともにボーっとしていたチコリータにきれいに決まった。
途端ふらふらして目の焦点があわなくなったチコリータを見て、さらにあわてるピンク。
「ボーっとしてたら、いつの間にか終わっちゃいますよ?」
ゆらゆらと挑発的に尻尾を揺らすキュウコンの後ろで、にんまり笑う私に、ようやく理解がおいついてきたらしい。
カノンは怒りで顔を真っ赤に染め上げながら叫んだ。
「許さない、許さないわよ五月雨マコト!!!!」
「だから私は五月雨マコトじゃありませんよ、っと。ユズちゃん、おにびを」
「!!チコリータ!よけて!!」
「チコー・・・」
よろよろ、と横に移動してみたものの、そんな動きで私のキュウコンの攻撃から逃れられるはずもなく。
凶悪な顔をした炎に包まれ、悲痛な鳴き声を上げるチコリータ。
混乱にやけど。
大した実力もあるわけでないむこうに、もう勝機はない。
「どうします?もうギブアップしときます?これ以上チコリータを痛めつけたってなにも生まれませんよ」
「チコリータ!まだやれるわよね?!いけるに決まってる!!!」
なにこいつ怖い。
もうふらふらのよろよろで、戦意喪失すらしているチコリータをまだたたかわせようというのか。
「・・・あなた、弱すぎますよ」
「そんなはずないでしょ!この、私が!神様に才能をもらったこの私が!!」
「ポケモンのことを知らなすぎる。戦局も読めない。道具も使えない。引き際もわからない。・・・とんだ才能ですね」
「!!うるさい、うるさいうるさいうるさい!!!」
「ユズちゃん」
これではあまりにチコリータがかわいそうだ。
せめて、
「オーバーヒート」
この一撃で終わらせてあげよう。
いつもより照りつけている強い日差しの中放たれた炎に、チコリータは完全に戦線離脱したのだった。
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*ユズちゃん…色違い夢キュウコン♀。ちなみに5V。文中出てきたようでわからなかったかもしれないけれど、夢なので特性はひでり。NNは管理人のプレイデータより。
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