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どうしようこれ。


私の頭の中はその言葉でいっぱいになっていた。

というのも、無事に名前もつき、ようやくありつける食事のために喜び勇んで一階の食堂に降りてきた私たちに突っかかってきた人間がいたのだ。


「なんであんたがここにいんのよ!五月雨マコト!!」


髪の毛ピンク色した、バカっぽい顔つきの女、失礼毒が入りまくった、麗しいジョーイさんと同じ髪色してる割に落ち着きのない女、どうあがいてもこいつのことを褒めることはできなさそうなのでもうあきらめた。ピンク女だ。

なにも私だって初対面の人間をここまでひどくいっているわけじゃない。
何を隠そう、こいつこそが、醜い嫉妬と理屈のつかない自己正当化によってわたしを刺殺してくれやがった犯人さまである。
はっきりいわせてもらえば、私が恨みに恨みまくってる人物だ。


「なんでなんで!むかつく!ここは私の世界よ?!なんであんたなんかが…!」


それはあなたが私を刺し殺したからです。と心の中では即答したものの、正直私は悩んでいた。
ここでバカ正直に対抗しても、こいつの都合のいい頭のことだからなにかと文句並べられて結局なんかこっちのもやもやがたまるだけになるのは目に見えてる。どうしたものか…。


「しかも、色違い?どうせどっかから盗んできたんでしょ?私ですらもらえなかったポケモンを、あんたがもらえるはずないものね!」


とかいうわりにこいつの腰にはモンスターボールが一つ。
…おまえか、件のポケモン泥棒は。そういえばピンク色の頭である。なんで気づかなかったんだわたし。

ますますどうしようか、ここで通報してやろうかこの野郎、しかしそれでは私もなんとなく消化不良。
泳がせて泳がせて、そして最後に叩き落としてやりたいっていう私のくそみたいな根性が立ち上がってきているんだ。


目の前の女にいろいろ怒鳴られながら考えた結果。


「あの、人違いじゃありませんか?」


しらを切ることにした。


「は、?あんた何言って、」

「あなたの言っていることに、覚えがありません。私は確かにマコトという名前ですが…あなたのお名前はなんですか?」

「カノンよ!覚えてんでしょ、ふざけないで!」

「カノンさん…やはり覚えがありませんね。さっきからいきなり怒鳴ってきて…しかも人を泥棒呼ばわりだなんて、失礼しちゃいます。この子は正真正銘私の子です。色違いは確かに珍しいですが、それはこの子と私の運命ってやつです」


乱数調整という名のな。
ぽかんと間抜けにあけた口がとてもおかしくて、調子に乗った私はまだまだ続ける。

本当は名前も顔も知っている。髪の毛は変わっているけれど、それ以外は何も変わっちゃいない女、カノン。ここまでゆがんだ性格をしていると、いっそ潔く思えてくる。
まあ都合よく食堂には従業員さん以外だれもいないことだし、思いっきりバカにしちゃれ。


「あなたもトレーナーなんですか?その割には旅に向かない格好をしているし、ポケモンも一匹だけなんて・・・はははっ!」

「はぁ?あんた何様?いきなり私のこと笑うなんて失礼にもほどがあるんじゃない?!」

「あなたに言われたくありませんよ。あなたにだけは」

「っ、むっかつく!顏も名前もあの女と一緒だし、ほんっとむかつく!」

「そういわれましても」


やれやれ、という態度を隠さずにため息をついてやれば、さらに激昂したカノンが腰のボールを手につかんだ。


「勝負よ!!」

「はあ?」

「そのむかつく顏地面にくっつけて、土下座してもらうから!」


とかなんとかいうと、まだ了承もしていないのに相手はボールを地面にたたきつけた。
すると、赤い光とともに出現する緑色の葉っぱ。失敬、大変愛らしいチコリータだ。ボールの中で話は聞いていたのか、不安そうな顔できょろきょろしている。さてはなついてないな、こいつ。


「あんたバカですか。室内でバトルなんてできるはずないで、」


ぱぁん!
力いっぱいはたかれた。なんだよこいつプリンかよプリンの往復ビンタかよ。プリンフェアリータイプ昇格おめでとう。ドラゴンに強くなれるんだってねおめでとう。そんなことはどうでもよかった。

頭に血がのぼっちゃってるらしいこのピンク女がバカなことをやってくれたおかげで、私の腰につけているボールたちがカタカタ動き出してしまった。腕に抱えていたヒノアラシのアレブも、もぞもぞしている。

どうも、うちの子たちもやる気なようだ。


私はもう一回、はぁ、とため息をついた。


「なら表に出ますか。…格の違いってやつを、みせてやるよ」


今回に限っては、アレブはベンチ待機ね。



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*食堂…宿泊施設の一階に必ず併設されている、トレーナーたちのための食事処。トレーナーズカードを見せればいくつかのメニューは無料で提供してくれる。



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