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地下から這い出て、謎の大広間と名づけられている場所からなんとか出てこられた私だが、テンションはがた落ちだった。アンノーン怖いよアンノーン。
ふと視線をさげて、身に付けているボールをみる。
その小さな背中で必死に私を守ろうとしてくれたヒノアラシ。かわいい。私の手持ちのなかで誰よりも弱いのに、誰より先に飛び出してきてくれたとかマジもうこの子私のこと大好きすぎるでしょかわいい愛してる!
色違いは好奇の目に晒されるからってことで連れ歩くことはしなかったけど、もうそろそろ良いかもしれない。この子も強くなったしなによりもうこの子のこと自慢したい超自慢したい。
「出ておいで、ヒノアラシ!」
赤い光と共に現れた淡い色のヒノアラシ。
さっきのご褒美も込めてメチャメチャになでまわしながら、そういえば名前すら決めて無かったことに気づく。
「今日ポケセンで君の名前を考えようか」
「ひの!」
「カッコいい名前付けてあげるからね!」
「ひのひの!」
嬉しそうかわいい。もうかわいいしか言えないわかわいい。
今日はアルフの遺跡に寄った後はヒワダまで突っ切ろうと思っていたけれど、取りやめにしよう。
そう思って北のゲートに向かう。
それにしてもなんだか騒がしい。またポケモン泥棒の件かな。ライバルくんもようやるわ…
とか何とか思ってたら、警察らしき男性から話し掛けられたら。ジュンサーさんではなかった。
「そこの君!」
「はあ、なんでしょう?」
「突然ごめんね。今とある事件の調査をしているから、トレーナーカードを見せてもらえるかな」
「トレーナーカード…はい、どうぞ」
トレーナーカードはすぐ出せる落とさない場所に仕舞おうという考えのもとさっと取り出せたトレーナーカードを見せてやると、警察官はさっと顔色を変えた。
「!ゴールドトレーナーの方でしたか!失礼しました!」
「いえお気になさらないで下さい。…ところで、どんな事件が?」
「実はですね、ウツギ博士のポケモン研究所に、泥棒が入ったんですよ。ポケモン泥棒が!」
「ウツギ博士のところに…!?」
とか驚いた振りするけど知ってますそんなこと。あれでしょ、ヒビキくんがヒノアラシってことはワニノコが盗まれたんでしょ知ってる知ってる
「はい、それも犯人は複数だったらしく、二匹ものポケモンがぬすまれてしまったのです」
「に、ひき?複数犯?」
「はい…男女の二人組だったそうです。赤と桃色という特徴的な髪色をしている二人組らしいので、目撃されましたらぜひご一報を!」
「は、はい…丁寧に、ありがとうございます…」
「いえ、あなたのような善良な市民を守るために私たちがおりますので!くれぐれもお気をつけ下さい!」
「ありがとうございます。…お仕事、がんばって下さいね」
「はい!」
それでは私はこれで!とアルフの遺跡のほうへと去っていった警官を呆然と見送る。
桃色の髪の、女の子?そんなの滅多にいる人じゃないだろう。アカネちゃんくらいしか知らない。しかしまさかジムリーダーが盗人なんてするわけ無いだろうし、というかアカネちゃんはノーマルタイプの使い手だからワニノコもチコリータも要らないだろう。
なら、全く知らないイレギュラーな誰かが?
「これは…なんだかめんどくさそうな予感だねえ」
そんな私の呟きだったが、よくわからなかったのか、ヒノアラシが嬉しそうに「ひの!」と鳴いた。
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