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さてこうして私は二個目のバッジを手に入れたが、これはここがまあ割と田舎だったからできたことというか、トレーナーズカードの提示が必要なかったからできたことだよなあ、これから先どうしようかなあと悩んでいる。
ここでもトレーナーズカード見せてくださいと言われたらダッシュで逃げるつもりで挑んだわけだが、「すみません忘れました」の一言で呆気なく通してもらえたので難なくビジョンを駆逐できたのだ。

こんな杜撰なジムがずっと続かれるのもイヤだが、ジムがないというのも旅の目標が無くてやる気を失う…難しいところだ。私が悩んだからってジムの制度が変わるわけでもないけれど。

などと考えながらキキョウから南に下って、ついにアルフの遺跡なう。
カブトの目の左右って明らか区別させる気無いよねアレ…。初回プレイのときは絶対バグってるだけだと思ってた。まさか左右逆だとは。

ガイドのお姉さんの説明を右から左へと聞き流しながら、カブトを作っていく。
カブトかわいいよカブト。実兄がカブトプスをこよなく愛していたからか、カブトをみるとつい愛でたくなってしまう。さあ、昔の私とは違うんだ。お前の目の区別など朝飯前さ。

例のパズルの最後のピースを埋め込む。

ーーカチリ。

どこかで何かが嵌まった音がしたと思ったら、次に地響き。
ガイドのお姉さんが尋常じゃなく慌てて、あ、てか、このあとって…


気付いた時にはもう遅く、その場から離れようと浮かせた足も、地面についていたはずの足も、空中に投げ出された。

一瞬の浮遊感ののち、落下。

もう絶対にジェットコースターには乗らない、ていうかこのまま死ぬことすらあるだろうと覚悟を決めるくらいの恐怖をかかえながら、私は次くる衝撃を想定して身体を強ばらせる。

しかし、ついにぶつかると思う直前に、何かにゆっくりとスピードを落とされ、想像していたよりもはるかに柔らかに私は床に着地した。

展開についていけない。この流れに、私が一番置いてけぼりである。
とりあえず命の恩人は誰だ、と辺りを見回すと黒い影。

………お化けがいた。
いやアンノーンだ。知ってる。
しかしこの薄暗い遺跡で一つ目のなにかがいたらもうそれは完全に妖怪の類だった。すまんアンノーン。

めざパ撃たれたりしちゃうのかな…と身構えていると、どんどん増えるアンノーン。え、これそういう死亡フラグでした?や、まあ私の頼れるポケモン達にしたらたぶん一瞬でKO勝ちなんだろうけど。おそるるにたりんわ。

内心でファインティングポーズをとる私に、まるで直接脳に語りかけられているかのようなアンノーンの声(だろうもの)が届く。


「喚ばれし者」
「お前が」
「そうか」
「救うもの」
「この世を乱す」
「しかし喚ばれた」
「お前が」


一気に語り掛けられる。処理が追いついていないのか、頭が痛い。


「救え」
「守れ」
「救うのだ」
「喚ばれし者」
「それが運命」
「奴を討て」
「返さなくては」
「害を」


なにがなんだかわからなくなってきて、視界がどんどん白くなっていく。

しかしその不穏な気配を察したらしい私の愛するヒノアラシが、自らボールから飛び出して臨戦態勢をとってくれた途端に、頭の中の声が止んだ。そしてあれだけいたアンノーンたちもみなどこかへと消え去った。おい謝罪の一つもなく蜘蛛の子散らすようにとかお前らガラス割った小学生か。なんか一言くらいいってけや。先生絶対怒んないから。これって絶対嘘だよね。


俄かにしんと静まり返った遺跡とまだ背中の炎を絶やさないヒノアラシ。アンノーンの気配はもうない。


「…一体、なんだったんだ…」


その頭を一つなでてお礼を言うと、私は腑に落ちない思いを抱えながら地上へと続く階段を探した。

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