友人Bの考察


俺が思うに、仁王が壊れた原因はもちろん彼自身の屈折に屈折を重ねたようなその心理だが、一因はあの女生徒、春子にもある。

それは、彼女にとってあまりにもわかりにくかっただろうが、しかし大きな分岐点であったことは間違いない。


「ねえ、柳」

「…なんだ」

「あの子は本当に、バカな子だね」

ーーあのとき俺の手を取っていれば、あんなに泣くこともなかったろうにね。


テニスコートから見える、校舎から校門へと続く坂道。
そこを泣きながらも必死の形相で駆け下りている少女の姿をすっと冷ややかに細めた目で捉えて、この男は笑った。


彼女が悪い。

差し出された神の子の手を、取らなかったのだから。


「(…まあ、それが救いであった保証はないが)」


まるでいたぶるように、わざとゆっくり少女を追いかける我が部員の姿を見つけるとさらに楽しそうに笑い出した幸村を見ながら、俺は小さくため息をついた。


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