少女Aの悲劇


わたしはただ普通に、テニスをしている彼に一目ぼれをして。ただ、好きだっただけなんです。
それが、どうしてこんなことになったのか、今となってはよくわかりません。思った以上に、彼は私のことを愛してくれていたのでしょうか。それとも、ただ自分がすてられるということが癪に障っただけなんでしょうか。一応考えては見るけれど、もう、どっちだっていいのです、私には。

「春子春子春子、春子」

狂ったように私の名前を呼ぶ彼のことが好き、でした。
けれどそれはちょっと前までの話で。

今はもう、

「春子、春子。好きじゃ、離しとうない。離さん。離さんからな」

ただ、怖いだけなのです。



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