少年Aの独白


 だって彼女は俺のことが大好きだから。彼女の顔も名前以外で知っていることはほとんどないけれど、それだけは知っていました。顔を見ればそれくらいわかりました。だから俺は、一人はさみしいから、彼女に、付き合おうと、そういったのです。驚くくらいにいつものことでした。

 それからは、以前と変わらない日々の連続でした。テニスをして、さみしくなったら彼女を呼んで、そばにいさせました。今までの女の子と変わらない彼女は、それだけで嬉しそうに笑いました、
辛いという言葉を聞かないから、まだ大丈夫なのかと思ってしまっていたのです。だってほかの女の子は、すぐに泣きついてきたから。辛いって言われてないなら、まだ彼女は頑張るのかなと。そう思っていたのに。とっくに限界は来ていて、俺はある日唐突にそういわれたのです。別れてください、と。
 まあそれなりに場数を踏んできた俺はそんなに傷つくはずもなかったのに、なぜかつらかったのです。前言われた時には腹立たしさしか感じなかった言葉が、なぜかひどく悲しくて、かすれた声でどうして、と返すので精一杯でした。そんな俺に、彼女はただ悲しそうに笑って、「ごめんね」と。彼女のその言葉にも、悲しそうな表情にすらも、ありきたりな表現ですが、俺のこころは悲鳴を上げてしまうのです。こんな経験は初めてで、俺もどうしたらいいのかわかりません。どうしても、なん?みっともなくも、かつての自分がまったく嫌悪していたはずの態度で、俺は彼女に縋りました。それでも彼女はただごめんなさいと繰り返すだけで、とうとうそこからいなくなってしまったのです。
 彼女がいなくなったのが悪いのです。だから俺は悪くない。そう言い聞かせながら、俺は最低なことを、最低な、  ああ!

 彼女が帰ってきてくれた!
  俺は幸せです。


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