やんでれー
「ユキー、ユキー」
「雅治。・・あ、トリックオアトリート」
遠くから私を呼ぶ声が聞こえ、振り返るとヤツがいた。ドラマのタイトルではなく、私が振り返った先には事実雅治がいたのだ。
そして私は今日の日付を思い出し、彼が近寄ってその言葉を吐く前に先手を打っておく。
「んっ!」
するとどうしたことか。雅治はにこっと気前よく笑って、自分の右手を差し出した。
期待してその掌の中を見てみるも、なにもない。飴の一つも乗っていない。
「・・・なに?悪戯はしっぺで勘弁してくださいっていう意思表示?」
「違う。トリートのほうじゃ」
「・・・・見たところ、お菓子は無いようだけど」
「菓子なんかよりウマいもんあるじゃろ?」
「どこ?」
「ここ」
そういって雅治が指すのは、やっぱり彼の腕である。
それのどこに美味しさがあるのか。実は砂糖が塗ってあるとかそんなことはないだろう。いや、雅治だから言い切れる自信はないけれど。
それにしたって、腕舐めて、なんていう気持ち悪いことは言わないと思う。
「俺の手、食べて?」
「予想斜め上!」
「?」
「いや、そんなキョトンとした顔されても。ていうか、私がしたいわその顔!」
「なんで?お望みどおり、トリートじゃよー」
「ゆっる。ゆっるゆるだけど超病んでる。どうしよう」
「俺の体の一部がユキの体を構成する一部になるなんて・・・うっとりするのぅ」
「そこでこっそりと悦に入らないで正直気持ち悪い」
「きもっ・・?!・・じゃあユキ・・・食べてくれんの・・・?」
「食べないよ。お菓子あげるから、部活いってきなさい」
これ以上話を長引かせたくない私は、先ほどクラスの男子から奪い取ってきたキシリトールガムを、彼が差し出している手に握らせた。帰れ、帰れ。こっくりさんを呼び出してしまった小学生の気分である。
「・・・これをユキと思って食えばええん?」
「・・・ん、もう、なんでもいいから」
「大切に食うからの!」
そしてこのすごく清々しい笑顔である。
私は、小さく手を振りながらテニスコートのほうへと向かっていく雅治の後姿を見送った。
「ヤンデレ萌えーとか・・言えないよ怖いなぁ」
明日には通常デレモードに戻ってくれていることを祈るばかりである。
Happy Helloween...?
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というわけで、隠しはヤンデレ仁王でした。
ヤンデレとか書いたこと無くてぼろぼろです。