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「ハロウィーンだよ、幸村くん!」

「ハロウィーンだね、ユキ。楽しい?」

「とっても!」

「そう、それはよかったね。じゃあほら、丸井の食料でも取ってきなよ」


いつもより三割り増しで高いテンションのまま、我等がテニス部部長のところへ突撃すると、彼は私に向かって、まるで犬猫でも追いやるかのような仕草で手をふった。

その様子から、今日は少し機嫌が悪いようだと察しがついたが、逆なでしないように接すれば大丈夫だろうと私は自分の目的を話す。


「それよりゆーきむらくん。君のお母様が作ったという美味しいパンプキンチーズケーキをください」

「三回まわって、俺の言うことなんでも聞くっていうんならあげるよ?」

「・・・あれ、なんか条件異様にハードル高くないですか?なんでそんなに不機嫌なの」


つい、地雷とは分かりつつも聞いてしまった。
実は、こんな幸村くんは珍しいのだ。いつも周りへの気配りを忘れない大人で物腰柔らかな紳士、という幸村くんがここまで機嫌が悪いと、私はそんなに悪いことをしたかと不安になってくる。

私が尋ねると、幸村くんの眉間の皺が深くなった。美人が怒ると、怖い。


「・・ユキが、俺じゃなくて、赤也に、最初のハロウィーンの挨拶をしたから、かな」

「え・・・だって、朝途中であったから・・・」

「だから?」

「・・・ごめん」

「ユキの彼氏は誰?」

「幸村くん」

「じゃあ、クリスマスの予定は空けられるね?」

「うん・・・あ。いやいやいやいや、私クリスマスはクラス会があって・・!」

「え?」

「なんでもない!幸村くんのために空けるよ、もちろん!」

「だよね」


確かにクリスマスは恋人のためのものでもあるけど、私は楽しいプレゼント交換も捨てがたかったのだ。
しかし、ハロウィーンで彼の機嫌を損ねてしまった私に異を唱える権利はない。

目の前にいる幸村くんにばれないよう、私はひっそりとため息をついた。


「ねえ、ユキ」

「んー・・・?」

「俺はまだ、お菓子もらってないよ。トリックオアトリート」

「今なんもないや・・・キスでいい?」

「うん、いいよ」

「じゃあ、遠慮なく」

幸村くんの鼻の先に、小さく掠めるようなキスをひとつ。
そのあと私へのトリートに、瞼への軽いキスが贈られた。


Happy Helloween!!!

⇒アトガキ

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