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「あ、仁王くんー」

「ユキじゃー、菓子くれ」

「作ってきたケーキが部室にあるから、それ皆で後で食べてね」

「えー」

「えー?」

「今欲しい、いま。くれー」


丸井くんから奪ってきたらしい菓子類を腕に抱えながら、随分な物言いだ、と私は少し眉を寄せた。
その私の不機嫌顔からすぐに悟ったらしい仁王くんは、心持ち肩をすぼめながら、「ください、」といいなおした。かわいいから許してあげよう、と頭を撫でる。


「でも、今は持ってないんだ。ごめんね」

「えー。じゃあ、なんかサービス、サービスして」

「サービス・・」

「『雅治、大好きっ』って言ってぎゅってしてくれたらすごく嬉しい」

「おー、分かった」

「・・・え、」


私は二回ほどこくこく頷くと、仁王くんの肩に手を伸ばして、お望みのとおりにその意外と厚い胸板に抱きつく。
思いの外背の高い仁王くんの肩に腕を回しているから、足は褄先しか着いていなくて、小刻みに震えた。


「雅治、好き。好き、大好きー」

「!ちょ、」


好き、と一度口にすると、なんだか物足りなくなって、もう一度、二度、と繰り返した。
その言葉で何回か空気を振動させるとようやく満足したらしい私の唇は、仕上げとばかりに仁王くんの頬に音も鳴らないくらい軽く触って、離れた。

すると、いつもクールで他人のことなんてどこ吹く風、という仁王くんはいっそ面白いくらいに赤面して、何か言いたげに口をもごもごとさせて、結局何も言えずにそのまま押し黙った。


「はっぴーはろうぃーん、仁王くん。お返しは美味しい紅茶とかだと嬉しい」

「・・・ん」


Happy Helloween!!!

⇒アトガキ
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