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「あ、リーマス」
「ユキ?どうしたの、パーティは?」
「あぁ、ハロウィーンの?あんなの、オレンジまみれで目が痛くなって出てきちゃったよ」
それも、数時間前に。
私がそう言って笑うと、リーマスもつられて少しだけ笑った。
「・・怪我の調子は、どう?」
「んー・・いつも通り、だよ。そんなに心配そうな顔しなくたって、平気だよ」
「けど。リーマスはいつも幸薄そうな顔しているから、心配」
「君に運吸い取られているのかもね」
「ひどいなぁ」
「お互い様さ」
くだらないことで笑いあうのは、いつものこと。
幸薄そうっていうのはあながち冗談でもなくて、リーマスはいつも少し頬がこけている。甘いものでカロリー摂取しているはずなのに、全然太る気配が無い。どういう体をしているのかは分からないけれど、心配なのは確かだ。
「食べる?パーティの残り物で悪いけど」
「なに?」
「パンプキンケーキ。あと、ちっちゃなタルトもあるけど、」
「食べる」
「・・相変わらずの食いつきのよさだね」
「だって、ここはオートミールばかりだから」
「難儀なことだ」
「まったくさ」
パンプキンケーキをしまっているバケットを持ち直したところで、私はここに至った理由を思い出した。いや、もちろんリーマスの顔を見て食料渡すのも理由なのだけれど、もうちょっと直接的なきっかけを。
「リーマス、この杖リーマスのじゃない?」
ポケットの杖をリーマスに渡す。
彼は出てきたのがお菓子じゃなくて少し不満げな顔をしたけれど、しっかりそれをみると、あぁと呟いた。
「ああ、うん。ぼくの」
「やっぱり。談話室に落ちてたんだけど、なんか見覚えあったから。はい」
「ありがとう。それにしてもよく覚えてたね、人の杖なんて」
「うーん、リーマスのだからね」
言って、かぼちゃのお菓子たちを渡す。
普段ならさっさとお礼を言って受け取るところなのだけれど、彼はなかなか動かない。
どうしたことか。
「リーマス?」
「ねえ、それって、ちょっとは自惚れてもいいってこと?」
リーマスはすこし頬を赤くしながら、目を逸らしている。
ああ、そういうこと。
「ちょっとじゃなく自惚れてもいいから、私も、期待していい?」
「・・・もちろん」
思わず体から力が抜けて、手からお菓子が滑り落ちた。
かぼちゃのケーキに描かれたジャックオランタンが、さも楽しげに床でケケケと口を揺らした。
Happy Helloween!!!
⇒アトガキ