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気がつくと私達は、現実の学校よりも幾分か薄暗い階段に立っていた。
「うわ、なんかくらくらする・・・って、あれ?変わって・・・ねぇ?」
「ちゃんと変わってるよ。ちょっと暗いでしょ?」
「・・・確かに。これが、“ムコウガワ”なのか?」
「そう。ここからは、なるだけ楽しい気持ちで、さっき言った並び方を守ってね」
ジャッカルの言葉に頷いてから、皆に並ぶよう急かす。
「いーい?何か変なのがいても、あんまり怯えないこと。こんだけ人数がいるなら、よっぽどじゃなきゃ負けないから。とりあえず目が合ったら笑っとけば良いと思う」
「そんなんで大丈夫なん?」
「大丈夫だ、問題ない。一番良い笑顔を頼む。・・じゃなくて、・・・『そんなん』が大事なんだよ、うん」
「要は気の持ちよう、ということか」
「そゆことー。真田とか得意でしょ、精神統一」
「うむ。妖(あやかし)相手でも、いかんなく発揮できよう」
「流石。幸村は・・まあ、言うまでもなくタフだし」
「どういう意味だい、桐理?」
「いーえ!」
怖い。幸村怖い。
妖怪なんかとは格の違う恐怖というか、威圧感。とんでもない味方である。
「で。まず、どこへ行くつもり?」
「んー・・・まず、トイレ?」
「・・・・・・女子、ですか?」
「もちろん。男子トイレには太郎君でしょ?
私たちが探しに行くのは、“トイレの足跡” ・・つまり、 花子さん だよ」
「あー、定番・・っつーか、太郎君もいんの、この学校?!」
丸井のノリの良い突っ込みに、笑って、うん、と答えてあげる。
「超頭良い元主席の太郎君。本名は川嶋一太郎」
「ほう、興味深いな」
「ちなみに没年は・・」
「名前の口から他の男の話なんて聞きたくなか!」
「・・・そうやって何でもかんでも話の腰折るのやめてくんないかな」
「仕方ないですよ、仁王君ですから」
「仕方ねぇよ、仁王だもん」
眼鏡をくいっと上げながら柳生、ぷくーっと器用に風船を膨らませて丸井が言った。言っていることはほぼ一緒です。
ぴとっ、となんのどさくさにまぎれてか、腰に張り付いてきた仁王の頭を撫でてやると、さらにぎゅっと力を込めて抱き絞められた。
「幽霊なんかには、指一本触れさせんからな」
「あーそーだねー。ありがとー」
棒読みにもかかわらず、仁王は嬉しそうに笑顔を零れさせる。
こんだけの幸せオーラだしてれば、幽霊・妖の類はおろか、人間だって寄って来ないだろうよ。
「・・花子さん、キレないといいけど」
「?」
「いや。とりあえず、トイレ行こっか。3階西側女子トイレに」
もう一度、皆に綺麗に並んでもらって。
七不思議探検隊、いざ出発と行きましょうか。