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暗い廊下を歩き続けて、私たちはようやく鏡の前についた。
普段あまり人が通らない場所なだけあって、空気が埃っぽい。

レギュラーたちの中には、この場所に来ることすら初めての人もいるらしく、後ろからはその繊細優美な細工への感嘆の声が聞こえた。


「ここが件の鏡だよ。さっそく“ムコウガワ”に行こうと思うけど、もう帰りたいひとー」

「おるわけないじゃろ、大切な桐理を置いて帰ろうとするバカなんて」

「そういう発言よくないよ、におー。帰りたくても帰れない空気になったじゃん」

「分かった分かった、じゃあ帰りたい奴挙手せー」


そういって仁王が全員を見渡すが、だれも互いに顔を見合わせることなく、沈黙。


「・・ということじゃ。さっさと行くぜよ」

「じゃあちょっと待った。此処で個人的に帰って欲しい人がいる人きょーしゅ」


今度は私が質問を変えて皆に聞くと、なんと驚いたことに真田とジャッカル、仁王以外の全員の手が挙がった。


「ほー、じゃあまず丸井」

「なんつーか、ウザイから仁王に帰って欲しい」

「ふむ、におーに帰って欲しいと。じゃあ次、柳」

「仁王は邪魔になりそうだ」

「におーってば大人気。じゃあ幸村は?」

「場を仕切ってる感がイラつくから、仁王、」


幸村はそこで言葉を切って、自分の右手の親指で首を切る仕草をした。それ、クビってことですか幸村さん。


「というわけで・・・におー帰る?それとも柳生にも意見を聞く?」

「もう帰りたい・・けど帰りたくないぜよ」

「では、これからの行動を自粛してくださいね?」

「柳生、逆光眼鏡がこわいよ。におーがガクプルしてるよ」

「まったく、しかたがないなあお前達は。ほら、遊んでないでさっさと行こう?」


あんたが言うな、と思ったけれど口には出さない。だって幸村怖いのだもの。きっと他の人も同じ気持ちなのだろう、誰も何も言わなかった。


「・・じゃあ、あわせ鏡するよ」


ポケットから出した小さな鏡を、姿見に向ける。

鏡と鏡が向かい合って、そこに無限の道が出来上がった。と、同時に、怪談“踊り場の姿見”が発生して、その両方の鏡が光った。


「桐理!それで、どうするんだ?」

「私の後に続いて、姿見のほうに飛び込んで!」


“踊り場の姿見”の発生時間は1分。失敗すればまた合わせ鏡すればいいだけだけれど、また同じ場所につながるとも限らない。


私は急いで光る鏡の中に飛び込んだ。










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