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「まず、北校舎の階段踊り場にある、鏡のトコロにいきます」
「おいおい、いきなりかよ」
「大丈夫。“踊り場の姿見”は七不思議だけど、ただの移動手段だから」
「移動手段って…では、そこから“ムコウガワ”に行く、ということですか?」
「そゆことー」
いきなりといえばいきなりだけど、仕方ないのだ。時間は無限なようで、とても少ない。
私は柳生の質問に軽く返事を返しながら、何気なく私の隣に立とうとした仁王を目で拒絶した。
これは決して個人的感情によるものではなく、安全のためだ。
前から来た“そういう”類いは、全部私が食い止めるつもりでいるから、横に人がいると不安なのだ。
そこで私は皆に、“ムコウガワ”での隊列を伝えた。私が考える限り最もよい並び方だ。
まず私が先頭。そして私の後ろに、仁王、その後ろに丸井と真田が横に並び、柳、柳生、ジャッカルと続く。そして幸村が殿。
幸村が殿である理由は『精神が強そうだから』だ。黒魔術が使えそうとかいう偏見じゃない、断じて。
決してその列を乱さないように強く言い聞かせてから、私は次の説明にうつる。
「じゃ、次、鏡の説明ね。
『鏡の世界に閉じ込められる』っていう噂は嘘。ただ、鏡を通じて“ムコウガワ”に行っちゃって、獰猛な奴等に食い殺される可能性は十分にある。当然、“ムコウガワ”で食い殺されれば、死体もなにも出てこないから、帰ってこれない。噂の正体はこれだろうね。
これだけ大人数いればいきなり襲われることも少ないだろうけど、くれぐれも気をつけて。じゃないと、帰りは誰かが欠けちゃうかも」
にやりと笑って見せれば、丸井はひくりと顔を引きつらせた。