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そうだ。あのおじいさんの話を聞いた時点で、私の死亡フラグがその影を見せ始めた。
んで、彼らの登場で私の死亡率はぐんと跳ね上がったわけだ。
「・・・なんで、君たちがいるのかなぁ。ねえ、幸村くん?」
「面白そうだったから、ついてきちゃった」
語尾に星やハートがつきそうなくらいにイイ笑顔で、爽やかに言い切った我らが立海大付属中テニス部元部長幸村さん。
ようやくテニス部引退して彼の呪縛から解き放たれたと思った矢先にこれか!と、いい加減神様に助けを求めたくなる。
っていうかおじーさん、加護してくれるんならこの人どうにかして。
彼の顔をみるとまるで昨日のことのように思い出せる悪夢と苦行と苦悩の毎日。
部のマネージャーは部長の小間使いじゃねーんだよと何度叫びそうになったことか。
そんなことしたら明日の朝日どころか今夜の一番星すらみることができなくなりそうだから、自制して過ごしたが。
「もうマジやめてくんない?そうやって徒に(いたずらに)私の死亡フラグ乱立させるのやめてくんない?」
「ふふふ」
「もうやだこの人。なんでこんな煌びやかな人たちのために私の命使わなきゃなんないの。もうやだよおじーさん」
「己の学校が危険であるときに、女一人に全て任せて男がすごすご退散するなど言語道断!俺達も戦おう!」
「黙ってよ、さなだ。っていうか君たちは邪魔だと思ったから幸村に先帰ってって言ったのに!」
まずさなだは状況理解してないだろ。
あんたたちの根性やらスカウター壊れんばかりのラケットによる戦闘能力やら、そういうのだけじゃやっていけない相手なんだってば。
「まあいーじゃん。ここまで知っちゃったらもう帰れねえし」
「丸井・・・いいよ、帰ってくれて全く構わないよ。そんないらん正義掲げなくても、別に臆病者のレッテル貼ったりしないよ」
「皆さん、桐理さんのことが心配なんですよ。貴方一人でそんな危険に立ち向かうだなんて、気が気じゃありません」
「その君たちの行動が私の死亡率上げてんだけどな!」
「・・・悪い、佐々木・・・」
「ああ君は頑張った気がする。こいつら止めようとがんばってくれた気がする、ありがとうジャッカル」
「現在、俺達がお荷物になる確率は74パーセント。佐々木のこれからの行動如何では、この確率が下がることは十分に考えられる」
「たっか!お荷物確率たっか!そこまで確率出てんなら止めてよ!」
「がんばれ」
「え、その薄気味悪い笑顔何なの、参謀」
ジャッカル以外、なんか味方じゃない。味方なはずなのに味方じゃない。なんだろうこの疎外感。
しかし、この人たちより数倍うざったく厄介なのがいることを忘れてもらっては困る。
「桐理・・・そんな危ないトコに一人で行こうなんて・・・!なんで俺を頼ってくれんのじゃ桐理のばかぁっ!」
「・・・」
「桐理の白魚のような手に傷がついたらどうする・・・いや、そうなったら俺がお嫁にもらっちゃるけど、俺は婿養子希望じゃ!」
「・・・ね、どこの妄想魔ですか、におー」
「妄想魔じゃなか!近い将来の姿を言葉にしとるだけじゃ!」
「想像の域を出ない将来への発言に私を巻き込まないで頂きたい。つかにおーうっさい。君一際うっさい」
「桐理がツンデレになったぁぁぁぁ・・!」
テニスやってるときはすごいクールなイケメンなのに、ひどく残念な人だ。
周りのあぁまたか・・・っていう生暖かい目に気付けばいいのに、におー。
「で、何を倒すんだい?」
アイツは放置、とばかりに、うなだれるにおーを脇に押しやって話を進めようとする幸村。相変わらずのいい性格である。
「・・・階段についたら、話す・・・」
その彼の、本当に爽やかな王子様スマイルに、私はとうとう白旗をあげたのだった。