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今思うに、話の全てはたぶんここから始まったのだ。
私は立海大付属中学校所属のしがない一生徒だ。
ただ、素行はいい為、校長室掃除なんかを頼まれている。
今日は同じく校長室掃除の学級委員長鈴木くんが熱でお休みのため、一人寂しく校長室の古時計なんかを掃いている。
よし、今日はせっかく鈴木くんもいないことだし、念願を果たしてみようか。
「おじーさん、喋れる?」
『・・・驚いた。おまえさん、話せるクチかの?』
「まあね。おじーさん何時生まれ?おおきなのっぽさんの彼よりも長生き?」
『どうじゃろうかの?生憎と、我輩は一日の内の半分しか刻めんからの』
「はは、違いない」
おじーさんこと古時計のご老人は、意外と話しやすい神様らしい。
彼は所謂、付喪神(つくもがみ)ってやつだ。
こんだけ長いこといて、しかも毎日こんなに丁寧に掃除されているわけだから、悪い神様ではないはずだ、と思って話しかけたわけなのだけど、思った以上にいいおじーさんである。
『そうじゃ、お主。こうして話せたのも何かの縁、頼みごとがあるのじゃが』
「頼みごと?おじーさんにはできないことなんだ?」
『人間にしかできぬのじゃ』
「いーよ、おじーさん。私に出来る限り頑張ってみる」
『うむ、今どきに珍しく性根のまっすぐな娘じゃ。これからの人生を加護しようぞ』
「やったー、ありがとー。で、内容は?」
『学校内の付喪神を鎮めてほしいのじゃ』
「・・・・それって、おじーさんがやったほうがいいんじゃないの?」
『何をいっとる。付喪神を鎮められるのは今も昔も人間だけじゃて』
「そーいうもんかなー・・」
『そういうものなのじゃ。それに、どうにかせねば、危ないのはお主ら生徒じゃからの』
「マジか。具体的にどうすればいいの?」
『心して聞け。それはな・・・ 』