仁王雅治とその彼女
「先輩、次どこ行きますか?」
「そろそろお昼じゃから、なんか食べるか?」
「じゃあ私の知り合いのやってる喫茶店、行きませんか?」
「ええのう、決まりじゃ」
ある休日の昼下がり、手を繋いで街を歩く二人の男女。
他愛も無いことで笑いあって、まるですべてが初めてだというような二人の周りには、とても穏やかな時間が流れていた。
「そういえば、あの後丸井先輩からお菓子せびられたんですよ?」
「あの後って・・・ああ、あの後か」
「はい、あの後です。『仁王が全部食っちまったんだから、責任取れー!』って。なんで一人で食べちゃったんですか」
「向日葵ちゃんがいい子なのはしっちょるけど、貴重な手作り菓子をあんな奴等にやることなか。食べていいのは俺だけじゃ」
「独禁法ですよ」
「知らん」
「あのときの複雑な顔はやきもちだったんですね、結構悩んだのに」
「・・・プリッ」
少女の泣き顔なんて、もうどこにも見当たらない。
ばつ悪く顔を逸らした少年にくすりと笑いながら、少女はもう一度繋いだ手を握りなおした。
「じゃ、行きますか」
「ん」
It is so happy end!