苦悩のお話


少女は決して呪いなどに詳しいわけではなかった。

彼女は化け猫ではないのだし、特殊な能力なども、生憎と持ち合わせていなかった。


まず、化け猫は人を呪うというが、猫が呪い方を知っている訳ではない。

ただ、猫は正しい死に方でしか成仏できない、哀れな運命の下に生まれた生物であるというだけなのだ。
正しい死に方とはすなわち、当事者が満足のいく死に方であるかどうかということで、これが満たされないものであれば、その猫は、生前最も思い入れのあったものに憑く。

それが、人間の言う『化け猫』の正体だった。



とはいっても、誰がそのことを知っているという訳ではない。
化け猫が全て悪い霊現象を引き起こすということでもないし、そもそも化け猫の呪いなぞ弱弱しいものなのだ。
要するに、知らなくても特に害の無い情報だから、誰も知らない。


だからもちろんのこと、ユエもそんなことは知らなかった。

先日、財前少年に向かって言った「呪ってやる」という発言も、あくまでその場の勢いで、自分にそんな力があるとは思っていなかった。


だからこうして、彼女は今普段使わない頭を必死に使って考えて込んでいるのだ。


「うーん・・・なにやったらアイツは困るの?苦しいの?」


意地悪そうなアイツに、どうにかして一泡吹かせてやりたいと思うものの、どうにも人の感情というものに疎いユエには、悩んでも到底解決できる問題ではなかった。









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