少年のお話


少年のお話





まず、少年財前光は時々自分が良く分からなかった。

なんだか無性に何かを破壊したくなったり、だれでもいいから隣で自分を抱きしめて欲しかったり、何も考えたくなくなったり。

そういう時の自分は可笑しいと、自覚してはいてもどうするということもなかった。


彼は基本的に無気力な人間であったのだ。

だからこそ、時たまに体中を駆け抜けるあの熱気が恋しくて、テニス部なんていう青春部活動に入った。

日課はブログを書くこと。無気力な少年らしいといえば、らしい日課だった。

部活の中での一番のお気に入りは、ダブルスパートナーとなることが多い忍足謙也。自分の掌の上で踊ってくれる感覚がたまらない。



そんな彼のパーソナルデータは置いておいて、とにもかくにも彼は壊れる部類の人間であったのだ。

この場合の『壊れる』は、自分が自分を制御できなくなるときに人がよく言う言葉の意である。決して、機能的に使えなくなるわけではない。



その日、たまたま少年は壊れていた。
その日、たまたま空が晴れていた。
その日、たまたま小さな猫が彼の目の前に転がっていた。


その日、少年は何気なく、その猫を蹴飛ばした。

そして、たまたま通りかかったトラックに、その蹴飛ばされた猫が轢かれた。


それだけの話だった。



それだけの話、のはずだった。







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