幸福サタデー


「仁王くん誕生日おめでとう!」

「尊、」


尊の恋人である仁王雅治の誕生日は、やはりというかなんというかすごい盛況であった。
土曜日でも関係なく行われるハードな部活動に、いつもはそれを大して何も思わない、彼に恋する女の子たちが小さくガッツポーズを決めていたのを尊は見ていた。
土曜日でも、学校に来れば彼に会うチャンスがあるというのは、彼女達にとってとても嬉しいことだったようだ。


尊はそんな集団を見てざわつく心を覚えたものの、彼女には自惚れてもいいくらい仁王に愛されているという自負があった。また、自分もそれに負けないくらい彼を愛しているという絶対の自信もあった。だから、ざわついた心をどうするわけでもなく、部活後、知らない女子から差し出されるプレゼントを全て丁重に断っている仁王の姿を、その後ろから眺めていた。


「尊、俺、受け取っちょらんからな!」

「うん、知ってる。その潔癖なところ、素敵だよ。惚れ直しちゃう」

「!」

「だけど、ホントすごい人気。わたしもこれくらい祝われてみたいかも」


そう尊が呟くが、そんなの仁王はてんで聞いてはいない。先ほど言われた「惚れ直す」の言葉に酔いしれていて、それどころじゃないのである。その程度といえば、どこぞの氷の帝王もビックリな酔いっぷりだ。


「仁王くん?あ、私今日ケーキ焼いてきたんだよ」

「!!」

「あ、帰って来たね。チーズケーキなんだけど、食べる?」

「食べるに決まっとる」

「部室の冷蔵庫から取ってくるから、ちょっと待ってて」

「ん、ついてく」

「え?じゃあ、部室で食べちゃおう」


仁王と尊が手を繋いで彼女の部室へと歩いていると、周りからは羨ましそうな、嫉妬にぬれた視線が突き刺さる。

悪いけれど、私の彼氏は一途さんなのです。

尊はそっとほくそ笑む。
好きな人が自分のことを強く想ってくれているという態度を示してくれているのだ、嬉しくないわけが無い。


仁王とつながっている手を大きく前後に振って、尊は、彼に向かっていつもより3割り増しで機嫌の良い笑顔を見せた。

なぜ彼女の機嫌がいいのか分からない仁王も、尊の可愛らしい笑顔を見て嬉しくなる。


今日も二人は、いつもと変わらず幸せである。




(どう、おいし?)(まじ激ウマ。毎日味噌汁作ってほしいくらいじゃ)


11/12/11 2010年仁王生誕祭より移動
(2010年12/4は土曜日、2011年は日曜日でしたね)



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