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ばんっ、と大きな音を立てて尊の部屋の扉が開かれた。
犬も真っ青な嗅覚だか直感だかで、見事尊の居場所を突き止めた仁王が何か言う前に、尊は聞こえるかどうかも分からない自分の声で彼への交渉を試みた。
『よし分かった。とりあえずはなしあおう、ね?』
「・・・尊が、二人・・・」
『ね、仁王くん。とりあえず話し合おうってば』
「わ、わかった・・・」
『あ、聞こえるんだね。じゃあ適当にソファにでも座って?』
「・・・も、もしかして、尊は死んでしまったんか?!」
『不吉!ひどい!死んでないよ!いいからとりあえず座ってってば!』
「う・・・すまん」
尊の気迫に圧された仁王は、色々と釈然としない面持ちだが、おとなしく尊の部屋のソファに座った。
それを見て、尊は満足そうに一つ頷くと、ズバリ一言で現状を表した。
『見てのとおり、幽体離脱しちゃった!』
「・・・ありえん!」
せっかく座ったソファから立ち上がり、強くテーブルを叩く仁王。
『ありえないなんてことはありえないんだよ。あと、待ち合わせ行けなくてごめんね』
「どこの人造人間じゃ!待ち合わせ場所いっても誰も居なくてすごい寂しかった!」
『・・・二つ一緒に話進めようとするの、やめよっか』
「・・・プリッ」
こほん、と一つ咳払いをする仕草をして、会話の軌道修正を図る。
尊としては、この状況がまぎれもない現実であることを仁王に証明しなければならないのだ。
特に証拠も無いが、元より自分は結構変なのだ。これくらいのことあるんじゃない?というのが、彼女の正直な感想である。
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