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「ふー・・とりあえず、柳くんには2日間パシリでおけ?」
「あぁ。しっかり働いてくれよ」
「で、仁王くんは?」
尋ねた尊に、仁王はとても嬉しそうに笑って言い放った。
「2週間俺と一緒に登下校」
「却下。チップに見合った要求しか受け付けておりません」
が、一秒と経たずその要求は跳ね除けられた。
「な!じゃあ1週間と5日!」
「実質変わってない!だいたい仁王くんとは家の方向真逆だよ!」
「朝はおれが迎えに行く!」
「寝坊魔のお前がか?」
「そうだそうだー、やれるもんならやってみろー」
「やっちゃるぜよ!尊と一緒にいるためなら、なんだって・・・!」
「その情熱を全てテニスに注げたなら、弦一郎もあんなに苦労はしないだろうに」
柳が冷静に突っ込む。
しかし、そこに強く賛同を示す尊の相槌はなく、柳は不思議に思って尊を振り返った。
そして彼は、自分の行動を後悔した。
「仁王くん・・・」
明らかにときめいている。仁王のあの発言に。
「学校だけなんて、全然足りんぜよ・・・」
「!」
あぁもう仁王、それ以上言ってくれるな。
柳は心の中で深く深くため息をついた。いや、実際に零れたかもしれない。
これはもう、尊は完全におちているだろう。
そんな柳の予想通りに、
「・・分かったよ、途中で待ち合わせにしよう?それだったら、そんな早起きしなくても大丈夫でしょ?」
「・・ええんか?」
「いーよ」
「っしゃぁ!んじゃ、明日から一緒に行こ?」
「はいはい」
「手も繋ご?」
「うん」
「ゆっくり行こうな、せっかくの時間じゃし」
「そーだね」
それ以降の二人の会話に、もはや全くの興味も必要も感じなかった柳だが、どうしても理解出来ないことがあった。
ダウトのときあれほど考えが筒抜けだった尊が、柳でも見逃すほどの完成度で自分のときめきを隠せていることも、
仁王の行動が計算とは全く無縁の、所謂『天然』でのものであることも。
柳には到底信じられない、理解不能なことであった。
(今週はいいとして、来週はめちゃめちゃ早いよね)(朝練か・・これはもう、サボるしかないかのぅ)(仁王、俺がいることを忘れるな?)