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テスト前部活動禁止週間、通称テスト週間。
その三日目に、
「一」
「2」
「さん」
「四」
「5」
「・・ろく」
「「ダウト」」
「む・・むぅ」
男子テニス部部室にて、賭け事に勤しむ影3つ。
一つは、涼しげな目元にさらさらの黒髪が特徴の、参謀こと柳連二。
一つは、キラキラ光る銀髪の先を尻尾のようにチョコンと結わえた、詐欺師こと仁王雅治。
そして残りの一つは、詐欺師の寵愛を一身に受ける、ある意味立海最強の女生徒こと立花尊であった。
微妙な取り合わせの三人は、およそ1時間ほど、部室でダウトをし続けている。
そのゲームには賭け要素があるのだが、チップは金銭ではなく自分自身の時間。某狩人漫画の試験のようである。
「もー、また私が山とるのかぁ・・・」
「残念だったな。そして俺は上がりだ」
「俺もじゃ」
「なっ!また私の負け?!これで4回目だよ?!」
「ふむ。立花はこういうゲームは弱いんだな」
「オセロとかチェスとかじゃボロ勝ちのくせにのぅ・・・」
「二人がポーカーフェイス過ぎるのが私の敗因だと思うよ」
げんなりと頭垂れながら尊が言うとおり、4ゲーム中4ゲームとも、尊の一人負けであった。
どうしても焦りが挙動に出てしまう尊に対し、テニスで鍛えているのかなんなのか、全くといって良いほど平静を保つ柳と仁王。
その差が勝敗に大きく影響しているようである。尊のカードの引きが悪いのも、原因の一つであるが。
「ま、それはそれとして、じゃ」
「チップは、払ってもらわなければいけないな」
「うわー、二人とも嫌な顔してるね。越後屋みたいだ」
「ふっふっふ、よいではないかよいではないか!」
「それは悪代官だろう」
「わーバカだ、仁王くん」
「バカとか言うんじゃなか!傷つくじゃろ!」
とは言われるが、それでも尊としては慎んだほうであった。そのほかに言おうとした言葉としては、「発想が厭らしい」だとか「仁王くんの顔やばい」とかがあった。彼が地面に蹲るのは目に見えているため、言わなくて正解である。
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