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穏やかな昼下がり。
皆が思い思いの行動をするこの昼休みに、およそ自由過ぎる様子の二人がいた。

方や赤い髪を振り乱し必死の形相で廊下を駆け、方や少し長めの銀髪を風に靡かせながら鬼のごとき表情でそれを追いかける。

どちらも無論男であり、陸上部も真っ青な速さでの疾走だ。


「丸井!尊の昼飯返さんか!」

「も、食っちまったつってんだろ?!」

「……許さん!!」


そう言って更に速度をあげる仁王。

それを認識した丸井は、自分も追い付かれないように足を速く動かそうとするものの、既に限界であった。

何度も通った二人の姿に危険を感じた生徒は各自の教室へと避難し、廊下にはとうに誰の姿も見えなくなっている。


「待たんか、このブタ!!」

「〜〜ってめっ、ブタってなんだチキショー!」

「自分の行動と体型考えてみんしゃい!」


怒鳴り合いながら、全力の鬼ごっこ。


教室からその様子を見ていた尊は、ますますヒートアップする仁王たちにため息を一つ吐くと、可憐な声張り上げて二人に待ったをかけた。


「二人共、ストップ!!」


窓から身を乗り出し、精一杯の大きさで叫ぶ。


届くか届かないかというギリギリの音量でも、尊に対して特別なセンサーを持っている仁王はきちんとそれを拾い上げ、忠犬のようにピタリと足を止めた。

恐怖の足音が聞こえなくなったことを不思議に思った丸井もまた、立ち止まる。

「カムバック、仁王くん!」


尊がもう一度叫ぶと、仁王は瞬く間に丸井に背を向け先ほどと同じくらいのスピードで尊の下へと駆けて行った。


「……た、助かった…。」


彼以外誰もいなくなった廊下で、丸井はへたりとその場に座り込んだ。










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