メタフィクションのゆめのなか
「──たとえばお前は、永遠に止まった時の中で、何をしたいと考える?」
「…………時が止まっているなら、わたしは何もできないんじゃない?」
「それもそうだな」
「だからその答えは、『何もできない。故に、何もしない』」
「……答えにはなっていないな」
「答えにならない問いを投げたのは、貴方でしょう」
「そうだな」
「……。」
「……。」
「…………。」
「…………。」
「………………。」
「………………。」
「……………………。」
「……………………。」
「……『生きてるのって、なんか気持ち悪いよね』」
「……?」
「『どうせ死んじゃうのに、なんでみんな生きてるんだろう。なんで今日までそのことに気づかなかったんだろう。永遠のものなんて、あるわけないのにね。』」
「それは何だ?」
「昔、見たアニメの主人公が言ってた台詞」
「成程。知らなかった」
「貴方は知らないはずだよ」
「そうか?」
「そうだよ」
「何故?」
「そういうものだから」
「ことわりの話か?」
「うん、そういう概念の話だよ」
「そうか。残念だな」
「……生きているのって、気持ち悪い?」
「……いや、そうは思わない」
「どうせ別れが来るなら、生まれなきゃ良かったって思ったこと、ない?」
「そうは思わなかった。どんな形であれ、僕がお前と、もしくは僕以外の誰かと出会えたことには意味があった」
「……うん」
「そして、だから僕は永遠を選んだ。お前がいて、リリアがいて、だから永遠を望んだ。そこに『生まれなかったら』という仮定の話は存在しない」
「そうだね、知ってるよ」
「だから、それを叶えた」
「うん、知ってる」
「それについて、お前はどう思った?」
「…………生きている人間は簡単に永遠を願うけれど、それって自分以外のものに対してのことが多いよね」
「ほう?」
「卒業しないで、とか、未来に進まないでほしい、とか、色々なことを他人に願うけれど、それはあくまで画面から見ているからで、自分がその立場にいたら、しんどいんじゃないかな」
「……永遠を願われる立場、か」
「誰も、変わらないなんて、無理だから」
「……耳が痛いな」
「君は、そういうこと、なかったよね」
「そうだな。僕はいつでも、永遠を願う立場だった。僕の変化が、周囲よりも遅いから」
「……わたしが、君の永遠を願っていれば、よかった?そうすれば、君は永遠を願わなかった?」
「しかし、お前にそんな力はないだろう」
「……ないね。わたしは、何もできない。それでも、願うことに意味はなかったかな?」
「……………………わからない」
「……そうだよね、仮定の話だから。本当に起きたことじゃないから」
「…………たとえ、僕が永遠を望み、それを実現させても、お前は、お前達は、僕を、僕らを置いていく」
「……監督生に言ってる?それとも、わたしに言ってる?」
「両方だ」
「……そう」
「そもそも、お前は監督生で、監督生はお前で、お前はお前だろう」
「そういう話をしていたんだ」
「ずっと、そういう話しかしていない」
「……わたしは、置いていくよ。そうでしか生きていけないから」
「そうだな、知っている」
「だから、ふらふらとあっちこっちにずれて、永遠を願いながら生きる。そうでしか、存在できないから。わたしは、貴方と違うから」
「……………………。」
「わたしと貴方が逆だったら、わたしは貴方と同じことをしていたのかもしれないね」
「……何処が逆だったら、同じ選択をしたのか?」
「全部。力も世界も、状況も感情も、大切なものも生きる意味も、全部が違ったら、わたしと貴方は同じだった」
「……それはお前と言えず、それは僕と言えないだろう」
「そうかも。わたしは監督生で、貴方はマレウス・ドラコニア。わたしは地球の住人で、貴方はツイステッドワンダーランドの住人。わたしは三次元で、貴方は二次元に生きている。わたしは人間で、貴方は妖精族。わたしは現実で、貴方はフィクション。それが違ったら、わたしたちは違う生き物だった」
「……仮定の話だな」
「うん、どこまでも、仮定の話だね」
「ずっと、そんな話をしているな」
「ずっと、そんな話だったね」
「……それでも、生きていることが気持ち悪いこととは、僕は思わない。それがどんな形であれ、僕らは出会った」
「二つの意味でね」
「そうだ。星降る夜、オンボロ寮の前で。あるいは、画面越しで。そこに多少の差異はあれど、根本のところは何も違わない」
「……でも、ずるいね。永遠を願って、それを叶えてしまうのは。眩しいくらい、ずるい。フィクションの人間は、いつも眩しくてずるいね」
「ならば、いつかお前も来るといい。僕はいつでも、お前を歓迎している。そしてきっと、それは僕以外も」
「……いつかね。あるいはわたしの頭の中で」
「そうだな。その力は、お前にある」
「うん、わたしに、それはある」
「お前はペンを取れる。それで何かを紡ぐことはできる。それは、お前にしかできないことだ」
「……だからいま、こうなっている」
「そんなことばかりだな」
「…………ずっと、そんなことばかりだね」
「ずっと、お前たちはこんなことを繰り返しているんだ」
「……それもある意味、永遠なのかもね」
「僕とは違う、永遠だな」





「じゃあ、おやすみなさい。良いハッピーエンドを」
「ああ、ではまた。次のハッピーエンドで出会おう」




















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    最新までクリア済みです。
 次回のストーリー配信をお待ちください。







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画面に書かれた文字を、何度も見た一文を一瞥して、アプリをスワイプで消す。そして、スマホの電源を落とす。真っ暗な画面には何も、映っていない。

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