水底の夜光虫 | ナノ

▽ まちの裏と路地


クレイオスのまちの基準は栄えているか普通か、らしい。
町は民家が多くて、住んでるやつらが死なない程度に飯にありつければ町で、街は商家が多くて、生活に余裕があるやつがそれなりにいたら街、らしい。

もう一つ、クレイオスの基準の中に都市ってのがあるらしいけど王都とも違って、この世界にはないらしい。
連れてけ、って言ったら天寿全うしたら連れてってくれるって約束してくれた。
クレイオスは幽霊を見ることができるし触れもできるらしいけど連れてってくれなかったら取り憑いてやる。

クレイオスと一緒に街に行った。
街道から続く大通りには移動販売の台車も店の数もいっぱいあって、人でごたごたしてて、人波に流されて離れそうになったら手を繋いでくれた。

俺はツイてる方だと思う。
度が過ぎた盗みをやって鍬で殴られてもなんとか逃げれて、戻るに戻れず餓死しかけてたらクレイオスに拾われた。
大通りは賑わってて楽しいけど、その分裏があるのを俺は知ってる。
一瞬だけ視線を向けた路地には少し前の俺みたいなのが転がってた。
視線を戻したらクレイオスが俺を見てたから何を見てたかバレたかも。

晩飯の時に俺が倒れてた場所が路地だったら拾ってたか?って聞いてみた。
そこが私が通ろうと思った道だったのならば拾っていた。って応えが返ってきた。
あの路地を通っていたらあいつらも拾っていたかに関しては否。
あいつらは目に見えない者に頼ってるから縋られても無理だと。
目に見えない者ってのが神様なのかなんなのかは知らないけど、確かに俺はクレイオスが現れるまでそんなものを信じちゃいなかったし、そんなものに頼る暇があったら食い物盗んで飢えを凌いでた。

「目に見えない者なんざ信じない方がいい。
縋った相手の本当の姿や本心が後にわかって絶望に喰われたやつを私は知っている」
そんなクレイオスの言葉が何でかわからないが怖かった。

クレイオスは俺以外を拾う気はないらしい。
だけども俺が拾うことは厭わないんだと。
拾ったならば俺がやられて嬉しかったことをしてやればいいんだって。
クレイオスもやられたのか?って聞いたのに返事は返ってこなかった。



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