Hunting Festival
しっかり頂きましたけどね


カーン カーン──……‥・

『終了です!優勝は──351ポイントでディレーネ選手です!』
「くそっ、最後のあいつが倒せてたら俺が優勝だったのに!」
「内部への魔法の方が致命傷になりやすいんじゃし、仕方なかろう」
「いや〜、実に見事だったブリ……チッ」
「351ポイントで優勝です!」

大公、貴方が聞こえる舌打ちしちゃ駄目っしよ。
虫取り用の網を使って飛んでる飛空石を取り、称号の刻まれた大きなメダルと一緒にされる。

「望みの品とハンターの称号を与えるブリ!」

玉座の前まで来たら、ちょっとだけでいいから貸して?的な目で見られたけど無視だ。無視。

「わあ、凄いや、エフ!」

きゃっ、きゃっ、と効果音が付きそうなぐらいはしゃぐビビと見えるようにしゃがんでハンターの称号を裏表ひっくり返しながら見る。
こういうものがもらえるとは知ってたけど、本物は初めてみた。
いやだって、出るなと言われて毎年お預け食らってたし、毎年誰も優勝してこなかったし。

「称号はともかく、その浮いてた石ころはなんなんだ?見た所はただの石にしか見えないけど……」
「あぁ、これは」
「シド大公……」




「ご無礼をお許しください……!」
「我が王から……火急の言伝でございます」
「なに、ブルメシア王から?」
「うむ、聞くブリ!」

突然入ってきた血塗れのネズミ族の兵に凍りついたその場だったが、誰よりも早く復活した私と大公によって次にジタンとフレイヤも戻ってきた。
倒れかけたネズミ族の兵士に肩を貸して負担にならないように座り込ませる時に気付いたのだが、兵士の目は焼かれて開かなくなっていた。
不穏な気配を感じ取ったシュトラールが唸る。

「『我が国は、謎の軍の攻撃を受けておる!戦況は極めて不利、援軍を送られたし!』」
「!!」
「敵はとんがり帽子の軍隊でございます……」

自分の故郷が攻められているという事態に再び驚き固まるフレイヤと間近で戦争が起こっているのに背筋を凍らす私以外。
多分、ビビには二倍に衝撃的だろうな。
一度、オルベルタさんと顔を見合わせた大公が頷く。

「ブルメシア殿は古くからの盟友、直ちに我が飛空艇団を送るブリ!」
「あ……ありがたきお言葉!我が王もきっと喜ばれましょう。は、早くこのことを……お伝え、せねば……」

完全に俯いてしまった兵士に焦る大公。

「いかん!早く、その者の手当てを!」
「……駄目じゃ、傷が深すぎる。ここに来るのがやっとだったのじゃ。何があったというのか……」

私の横を通り過ぎ、冷静に脈を測って首を横に振ったフレイヤは悲痛に顔を歪めているのだろう。
肩が震えている。

この兵士にも家族がいただろうに。
首から下がる開きっぱなしのロケットには奥さんと子供であろう人達が写っていた。

何故ブルメシアは攻められることになってしまったのだろうか。
謎のとんがり帽子軍団……ブラネは何を考えているのだろうか。
今更、ダガーが不審な母親の事を話してくれた時にもっと真剣に調べればよかったと後悔しても遅いとは思うが、舌打ちぐらいはさせてくれ。













担架に乗せられたネズミ族の兵士を見送って始まった会議では問題が山積みのようだ。
狩猟際の後片付けの所為で派遣できる兵士は城に残った極わずか、国境警備に駆り出ている兵士を呼び戻してしまえばアレクサンドリアの監視が手薄になってしまう。
ブラネの汚い部分を見過ぎた所為か若干疑心暗鬼にかかっている私の意見としてはこれは罠としか考えられない。

「アレクサンドリアから目を離されると?」
「うむ、ブルメシアを見殺しにはできん」
「だったら監視にシュトラールを使えばいい」
「シュトラールを?」
「あぁ。昨晩、成体のサイズになれることはわかったからね。霧がなくても飛べるこいつだったら何かあった時に山を越えてすぐ知らせることができる」

持ってきていた二つのクリスタルをシュトラールに当ててみれば予想通りに成体サイズまで大きくなった。
見れば見るほど母さんのグナイにそっくりなその姿は懐かしさが半端なんだけど、室内で飛ばれるとむっちゃ迷惑。
翼が起こす風圧で大公は玉座に張り付けにされ、私達もちょっと踏ん張らないといけなくなってる。
私の横に着地したシュトラールを見て皆唖然とするし、大公は言葉を詰まらせながら頼もしいと行ってくれたけど……

どうすればいいかなんて私にはわからない。
私が生まれる前に起こった戦争もこれまた生まれる前に終わり、人が殺し合う戦争は親が話す物語の一つとしてでしか関わることがなかった。
ただ、悪者は死んだ。
負の系譜は途中で閉ざされ、今の平和がもたらされたと母さんは話し、元凶となってしまった犠牲者は約束を守ることで罪を償ったと父さんはそう話し、母さんの頭を撫でていた。
では、今回の系譜はどこから始まっているのだろう。
私達一般市民には内政事情なんてわかりはしないが、アレクサンドリアとブルメシア互いに過干渉になりすぎず上手くやっていけてはいなかったのだろうか。

ここで予定通り、私はトレノに行っていいのだろうか?
とんがり帽子軍団をビビと同じ黒魔道士かもしれないと疑う大公に驚くビビ。
母親を信じてはいるもののダリの地下を見たらしいダガーも信じたくない様子で顔を青ざめさせれいる。

「私は失礼する、飛空艇団を待ってはおれん」
「俺も行くぜ、フライヤ!」
「有り難いがお主には関わりのないことじゃ」
「仲間の故郷が攻撃されてるんだ、これを聞いて黙っていられるか!お前が嫌でも俺は行くぜ!」
「すまない……ジタン」
「僕も一緒に行く。自分の目で見たいから……」
「……わかった」




あーもーホント、どうすりゃいいのさ。




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