Village of Dali
おい、誰が死んだって?


マジクッソ頭痛ェ……

何者かに殴られた痕も無茶苦茶痛いし、せっまい所に閉じ込められてた所為で全身痛い痛い。
やっと出られたと思ったら、そろそろ終わるんじゃないかって不安を煽られるような飛空艇に箱(棺?)ごと乗せられてて、出てみればもう一つ、隙間だらけの別の箱に入れられてて、殺意が湧いた。

もう、いっその事撃ちまくって大破させてやろうと一緒に箱に入れられてた得物を構えた瞬間、隙間からしか差し込んでこなかった光が一気に入り込んでくるじゃないか。
即座に反応して銃口を向ければひょっこりと現れたそれ。

ビビのそっくりさん達。

ビビより大きくて、見下げてきてる金色の瞳には若干圧迫感を感じさせられるけど、危険という感じはしなかった。
操り人形みたいに意識がないのか喋らないビビのそっくりさん達は一斉に手を伸ばして私を引き出そうとする。
異物を除けようとしているのかもしれないが、外に出してもらえるのならば私は構わない。

「ありがとー」
「……」
「……」
「(言葉にも反応しないのか)」

銃口を向けたと同時に殺気を送ったというのに、彼らは反応しなかった。
ならばと一度も発してなかった言葉を出しても、彼らは私に見向きもしないで本来の仕事に向かっていってしまう。

無視をしたって感じじゃない。
まるで声が聞こえていないような、口を動かす意味がわからないみたいな感じで、それ自体に興味がないみたいだ。

……まぁ、どうだっていいんだけど。
彼らとビビの姿が似ていたってビビは彼らと似て非なる存在なのだから。


樽(箱じゃなかった)の隙間から見えていた通り甲板に運ばれてきていたらしく、少し首を振って見渡せば滅茶苦茶近くにあの村が見えた。
そして、アレクサンドラ方面から飛んでくる大きな黒い鳥のようなものも。

「ガーネット姫!女王陛下がお待ちだ!」
「!」

どうやらこの近くにダガーがいるようで、あの黒い鳥は追っ手だったらしい。
ジタンと素っ惚けた声のスタイナーがいることからビビもいるんだろうけど、さっきから声がしない。どうかしたのか。

「ククククク!姫よ、おとなしく従うのだ!」
「いやです!わたくしは帰りません!」

話しがどんどん先に進んでしまってるけどさて、どうしたものか……
残弾もそんなに多くはないからまだ遠いリンドブルムまでは温存しておきたい。
魔力も然り。
そんなとき、ふと目に映り込んできたオペレーションルームに護身用の武器があるんじゃないかと行ってみれば、ビンゴ。
ちょっと心許ない細い鞘と、その中に隠されているであろう刀身。
ガラスケースに飾られてるかのように置かれているそれは何処かで見たような母さんが使っていたような……

間違って鞘が外れないようにと鍔と鞘を縛っている薄紫の刀緒を外して、少しだけ刀身を出してみれば、そこには故郷の文字で【村正】の刻印が。
マ ジ 物 じ ゃ な い か !

ここにある筈のないものなのにどうしてここにあるんだ。
何だ?スタッフか?スタッフなのか?

「従わないつもりか?辛い目に合うぞ?」
「待たれよ!姫様をお連れするのはこのスタイナーの任務である!」
「そんなの知るか!」

私もこの状況を知らん!

「どっちでもいいけど、またボコればいいんでしょ?」

使える物は何でも使え。
気配を成る丈抑えて飛空艇の縁から黒い鳥(三角帽子2号だった)の羽根の付け根目掛けてダイブ。
頭がふわっとしたけど大丈夫、問題ない。

突然の上からの奇襲に対応が取れなかった2号が片翼を斬り落とされて絶叫している中、昨日振りに会えた姫様一行に近付いて行けば、最初は笑顔を見せてくれてたのに、その顔がどんどん険しくなっていくじゃないか。
人の顔見て表情歪めるとか失礼じゃね?

「「「「顔血塗れ/ですぞ/ですわ/だぞ/だよ!」」」」
「え?……ホントだ」

もう乾いてドス黒くパリパリになってるけど確かに酸化した血が顔半分についてる。
前髪にもついててその部分だけメッシュみたいになってるみたい。
ただでさえ初対面にエクステつけてるとか思われ言われるのに、もう。

でも首に掛けてたベルトは無事みたいだからよし。

「よくありませんわ!ケアル!」
「血は止まってるからよかったのに……ありがと」
「どういたしまして。ですが今度から早めに止血するのですよ?」
「エフ避けろ!」
「ファイラァ!」

ジタンの切羽詰まったような声に反応してその場にダガーを巻き込んで伏せた直後、頭上を炎が横切った。あっぶね。

炎の出所はビビではなくあの三角帽子2号。
片翼をなくした所為で不安定に飛行しながらのあの威力と的確性を持ってるとかずるい。
私は不安定な足場じゃ命中率下がるってのに……

魔力が高いってのもいいよね。
うーん、羨ましい。

「アスピル」
「!?」
「からのバイオ」
「!?!?」
「グッガァア゙アァァ゙!」
「はい、今のうちに斬り込み行く」
「「お、おう/う、うむ」」
「ビビはあいつの頭上に向かってブリザド」
「う、うん」
「ギィッ!」
「あ、シュトラールはあいつに直接小旋風」

急に魔力を吸収した私にその場の皆が驚いた隙を突いて2号にバイオを決めてやる。
三角帽子や服を溶かしながら2号自体にもダメージが加わっているのを確認してから、ドン引いていたジタンとスタイナーに行くよう指示してちびっこ二人にも攻撃箇所の指定を出した。

ダガーは言われずとも自分の役割がわかっているようで、ジタン達が攻撃を受けた瞬間にはもう回復できるように構えている。

私はといえば、ジタン辺りが持ってきてくれたであろう、地面にそのまま置かれてた対戦車ライフルに不備がないか点検中。
近距離も苦手ではないけど、やっぱり私は後方からの援護射撃が性に合ってると思うんだ。
……決してサボリではない。
時々試し撃ちで援護してるし。

「この程度のやつに負けるとか、冗談はやめろよ?不意打ちに全く気付かないで大事な羽根なくしちゃうような間抜けに、さ」
「(また明白な挑発を!)」
「(エフ、怖いんだから怒らせないで!)」
「誰が間抜けだ!」

氷の洞窟で襲ってきたやつと頭の作りは一緒らしい。
簡単な挑発に乗ってくれた2号に対戦車用ライフルを向ける。向けるだけ。
スコープを覗いて照準合わせてますよ、って振りをして私に注目させて他を見えなくさせる。

これの威力と危険性を知っているジタンはさっさとスタイナーから離れてるから、もう気付いているだろう。
勿論、2号から離れた場所にいるダガーは少し前から知っていた。


ビビが作った空に浮かぶ幾多の氷柱に。


氷だから影ができにくいし、シュトラールの小旋風の中心は風がないから気付かず、浮かぶ氷柱はどんどん数を増やしていき、ついには2号でも燃やしきれない量になっていた。

「小旋風、ブリザド、止め!」
「「うん/ギッ」」
「グッ、ア゙ァアァ!」

小旋風を止めたことによって重力に従い落ちて行く氷柱が容赦なく2号を襲う。
溶かしきるなんて叶わず、氷柱は腕に、翼に、肩にと刺さり、追い討ちと言わんばかりに刺さっている氷柱に別の落下してきた氷柱が当たって深く差し込まれてゆく。

痛みに悶え、転げ回る2号にどんどん氷柱は刺さって、ついには動かなくなり砂が風で流されるかのように消えて行った。
残ったのは一部の氷柱畑と、どうして2号はダガーの場所を特定できたのかという疑問。
それにビビから感じる戸惑いの気配だけだ。


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