ツヴァイ

 


白雪姫はカゲミツで、オミが王子様。
女王様…っていうか継母? で、魔女がカナエ、鏡は声だけ出演のヒカル。
俺は小人とシナリオやるから。
あとは残りの小人とナレーションと裏方だな、それはまた後で割り振るとして。
役ある奴はみんな喫茶店のウェイター・ウェイトレスもやってもらって、裏方は裏方な。
異論ある奴はいるか? ……いないな、じゃあひとまず決定。



白雪姫in文化祭U



そのあといくら何を言っても周り…主にオミとタマキは聞く耳持たず、2人が唯一話を聞きそうなキヨタカは愉しげに、アマネは我関さずといったふうに、何も言わずにことの流れを眺めていた。
そのあとは順調に役割分担は決まっていき、結局俺の意見はひとつも受け付けられないまま話は纏まったようだった。
「ご愁傷様」
オミの隣…俺の斜め後ろからそう言って肩を叩かれる。
振り返ると、ヒサヤが諦めなよと瞳で語っていた。
諦められるかと睨み返す。
「ファイト」
隣の隣からは、にやにやと笑いながらヒカルが声をかけてきた。
「ふざけんな、他人事だと思って」
そう言って睨む視線をヒカルへとずらせば、だって実際他人事だろ? なんて悪びれもなく言われてカチンときた俺は思わず立ち上がった。
否、正確には、立ち上がろうと、した。
立ち上がる寸前、少し腰を浮かせたところで後ろからオミに首をシメられて、もとい、(オミ曰く)抱き寄せられてあえなく椅子に逆戻り。
いらっとして振り返って文句を言ってやろうとすれば、教壇から自分の席(俺とヒカルの間の席)に戻ってきたタマキにいい笑顔で肩に手を置かれる。
「大丈夫、俺がその変態からカゲミツを守るシナリオを書くから」
いつもなら嬉しいやら恥ずかしいやらで直視できないはずのタマキの笑顔に、今ばかりは嫌な予感しかしなくて、妙に落ち着いた声で答えていた。
「いや、なにが大丈夫なのかわかんねーし」
そこで教壇に立ったキヨタカが明日の連絡やらなんやらをしたところで、6限終了のチャイムが鳴った。
LHRの間にSHRでやるようなこともさらっとやってしまったから、そのまま各々好き勝手教室を出るなり、残ってだべるなりしている。
俺はどうにも話の輪には混ざる気になれなくて(だって大概は楽しげに文化祭の話なんてしてるから)、そそくさと荷物を纏めて教室を後にした。
「カゲミツ!」
下駄箱で靴に履き替えたところで、名前を呼ばれて振り返る。
それは、そこまで走ってきたのか、少し乱れた息を整えながらこっちに歩いてくるオミだった。
「なんだよ」
一応聞いてやると、そんな冷たい反応しないでよ、と苦笑で返ってくる。
「うっせ。で、なに」
「もぉ…相変わらずつれないね。ま、そこが可愛いんだけど。帰るんでしょ、一緒に帰ろ」
そんなことを言いながら上履きから履き替えるオミに、なんで俺なんだよ、ヒサヤがいるだろ。と言ってやると、カゲミツとがいいんだよ、なんて普段滅多に見せないような優しい笑顔で返ってきて、迂闊にもどきりとしてしまった自分がいた。
認めたくなくて、振り切るように歩き出す。
「あ、待ってよ!」
慌てて追いかけてくるオミには答えず、早足で校庭を抜ける。
途中、校舎から名前を呼ばれて、振り返れば窓からタマキが手を振っていた。
俺もちょっと照れながら(だってタマキが無邪気に笑って手を振ってくれてんだぜ、照れる)小さく手を振り返すも、次のタマキの言葉に固まった。
「シナリオ、楽しみにしとけよー!」
「……できっか!」



To be continued
100419
加筆修正 100914