まだえいぷりるふりる(動詞)よ!
 0406*

エイプリルフールアルレオ話の数分前。



「うわああああん!レオ兄!どうしよう!」
「わわわっ!なんだどうしたッ!?」
「…ッチ」
深夜、突然部屋に飛び込んできたレオに、俺はただ驚き、ライブラは舌打ちした。
最近のライブラはレオにちょっと厳しい…というか、逐一俺に飛びついてくるのが気に食わないらしい、が、そんなことはともあれ。
半泣きで俺にしがみつくレオの肩を掴んで、顔が見えるように引き剥がす。
「おちつけ、とりあえずおちつけ」
「アニエスに嫌いって言われたあああっ!」
「「……は?」」
レオの言葉に、俺とライブラは顔を見合わせた。
アニエスといえば、レオが溺愛している双子の妹ではなかったか。
たしか以前会ったときは至極仲のいい兄妹に見えたが、さて何があったのやらと俺が首を傾げると、何かに気がついたらしいライブラがぷっと吹き出した。
「ライブラ?」
「なるほど、今日はもう4月1日になっていたんですね」
「え?4月ついた…あ!エイプリルフールか!」
「えいぷ…?」
ライブラの言葉に納得する俺に、レオは首を傾げる。
フェルトの教育はどれだけ彼らを外界の俗事から隔離しているんだかと半ば呆れながらも口にはせずに、一年に一度、大きな嘘をついてもいい日だよと教えてあげる。
「嘘?」
不安げにこちらを見上げるレオに、ああ、と頷いてやる。
「だって、すっごい笑顔で、だいっきらい、って、言われたんだよ」
「それは、とっても大好きってことだろうな」
「ほんとに?」
「だって、アニエスがきみを嫌いになるわけないだろ?」
そう言ってその柔らかい髪を梳いてやると、ほっとした顔をしてレオはへたりこんだ。
「なんだあ…、よかったあ……」
深く息を吐くレオに、何かよからぬことを思いついたようでにんまり、まさに悪人面といった表情でライブラが笑いかける。
「…ふむ。じゃあ、同じことを他の人にしてみないか?」
あんまり変なこと言ってくれるなよと俺が睨むより早く、ライブラの言葉にレオのほうが飛び込んできたときの泣きそうな顔とは打って変わって興味津々と身を乗り出していた。
「やる!どうすればいいんだ?」
「なに、きみの一番好きな人間に…、そうだな、『世界で一番大嫌い』とでも言ってやればいい」
それを言うライブラの笑顔のなんて綺麗なこと!(長い付き合いのせいか俺には胡散臭くしか見えなかった)
言葉の意味を理解するやいなや、レオは大袈裟なくらい、ぼんっと赤面し、俺はこめかみを押さえてため息をついた。
俺が止める気力すら失っているのをいいことに、ライブラは悪魔の笑み(だなんて言ったら心外だと肩を竦めて見せられるのだろう)でレオを唆す。
「面と向かって『好きだ』と言うよりは言いやすいと思うがな」
「そ、そうかなあ」
「ましてや『嫌い』は嘘なんだ、『好き』と言わずに好きと伝えられるぞ」
またなんだかよくわからないことを言っているんだと言ってやろうと思ったが、少々…否、大分頭の弱いレオはそれで納得してしまったらしく、そっか、そうかもしれない。と頷いていた。
いやいやいやいや!そこで納得するのはおかしいだろと俺が止めるより早く、じゃあ言ってくる!と飛び出して行ってしまった。
「あっ、レオ!」
「あの子は本当に単純馬鹿で面白いな」
「面白がるな!」

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