(@英雄2)





いてぇのは嫌いです。
ベッドに転がされた傀儡師は、諦めたように息を吐いてからぽつりとそう言った。
「なるべく痛みの無いよう努力はしますが」
相対する男は肩を竦めて苦笑する。
他人事だと思って、と傀儡師は不満げに眉を寄せた。
「ですからねぃ、そもそもやらなきゃいい話だと」
「それは無理な相談ですね。君はどうも、どうにかしてやりたくなる」
「悪趣味」
文句を零す傀儡師に覆い被さりながら男が笑うと、傀儡師は思い切り顔をしかめた。
顔にかかっていた前髪が横へ流れ落ちて、睨むように細められた目が晒される。
「褒め言葉と受け取っておきます」
シーツに散らばる髪に指を絡ませながら男がそう答えるのを聞いて、傀儡師はついっと顔を背けた。
「その態度ですよ」
ふふ、と男が笑う。
「嗜虐心が煽られる」
「っ…。ほんと、悪趣味」
男がにいっとそれまで見せたことのない笑みを唇に浮かべると、傀儡師は一瞬戸惑うように息を詰めた後、つんっと言い放った。
その様子にすら、男はくすくすと笑みを零すだけで。
その余裕げな様子に傀儡師はまたひとつ溜め息をついた。
「さて、お話はこれくらいにしませんか」


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