ドリーム(@ダブクロ)
過去話
湿気と生温い暴風雨が、もうすぐ夏がくると知らせる。 剥き出しの鉄筋を雨粒が叩くのが耳に煩わしい。 あの日も、こんな天気だった。
懐想
そこら中で弾ける雨の粒子で視界の煙る中、鼻先に落ちる雫に顔をしかめながら、俺と義父さんは狭い路地を歩いていた。 ひどい雨音、どこかから聞こえる猫の鳴き声、烏、人間の呻き声。 それに混じって、聞き慣れない音が聞こえた気がして、少し前を歩いていた義父さんの服の裾を掴む。 「ん?どうした?」 「なんか、赤ん坊の泣き声みたいのが聞こえた気がして…」 「赤ん坊?」 俺の言葉に、義父さんも耳を澄ませて、大して見えもしない辺りを見渡す。 「あっちだな」 「えっ?行くの!?」 どこからそれが聞こえるのかを察知した義父さんが、そっちを目指して歩き出す。 それに驚いて問えば、お前が言い出したんだろと言われてしまって、俺は口を閉ざした。 そうだ、多分、無意識だったけど、赤ん坊が捨てられてでもいるなら助けたくて、義父さんを引き留めたんだ。 同じ気持ちになった義父さんを俺が止める理由はない。 「ほら、行くぞ」 「う、うん!」
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