アルとレオ(@英雄!)





ニールのほう。アキレオ前提

INコキュートス



その問いは、唐突だった。
「君は、君の主を愛していますか」
「ああ」
俺はその問いに即答して、けれど、こんなことを言ったところで、無様にも牢に繋がれている自分が、慕っている、愛している彼を救えない自分が余計に惨めになるだけだと自嘲めいた笑みを浮かべた。
「そう、ですか」
俺の返答を聞いたそいつが、どこか哀しげに笑んだのが引っかかったが、それよりも、額に口付けを落とされて。
その行為と、寄せられた唇の冷たさに戸惑ってしまって気にしている余裕は削ぎ取られた。
「また、明日来ますね」
その日、そいつはそれだけ言い残すと、石造りの廊下に無機質な音を響かせながら去っていった。

――辺りに響き渡る無機質な音で、目が覚めた。
毛布にくるまって、いつの間にか眠ってしまっていたらしかった。
鉄格子の向こうに、あの男の姿をとらえる。
地下牢では時間はわからないが、奴が来たということは、"明日"が来たのだろう。
「此処は寒いですか」
格子扉の錠を開けながら男は俺に問う。
「ああ」
こんなところで嘘を吐いても仕方ないから、素直に頷くと、扉を開けた男が足音少なく近寄ってきた。
頬に指を這わされる。
その冷たさに身震いをして、逃れようと身を捩ると、そいつは先日のように哀しげに笑んだ。
「僕では、君を暖めてあげることができない」
奴はそう呟くと、右の頬へひとつ、口付けを落とすと、先日と同じように去っていった。

翌日は、薄手だが毛布を数枚持ってやってきた。
「ワインは赤と白、どちらが好きですか」
「赤、かな」
特に年代物はそれだけの時間をかけて熟成されただけあって美味い。
そう答えると、奴は少しだけ嬉しそうに笑って、俺に毛布をかけるそのついでのように左の頬へひとつ、口付けを落として地上へ帰って行った。
その翌日は、ワインと、グラスをふたつ。
ワインに関して、決して詳しいと言えるほどの知識は持ち合わせてない俺でもわかる、高級品だ。


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