ヌゴアル(@英雄0)↑
お題配布元:剥製は射精する
ちょっとグロ
それはほんの些細なねじれだった。 それとなく、どちらが合わせるでもなくいつだって知らぬ間に合っていた進行方向が少しずつずれ始めた。 意志の向く先がずれ始めた。 とはいえど、元は別の個体なのだからそんなことは当たり前で、今まで合っていたのがおかしいのだ。 聞き分けの無いこどもではないのだから、そんなことはわかりきっている。 それでもヌーゴは、のらりくらりと己と違う道を歩むアルケインに苛立っていた。 しかしそんなものは八つ当たりであって、今まで重なっていた時間がずれ始めたことそのものに苛立っていた。 そしてそのずれ始めた時間は今後決して重なることはないのだろうと無意識下で理解していたから尚更、苛立ちは収まらなかった。 収まりを知らない苛立ちは増幅していくばかりで、あまり大きな感情をいだくことを避けていたヌーゴにとっては制御出来ない慣れない、大きな波だった。 今だって隣に居るのにほら時間は歴史は別々に刻まれて。 嗚呼今後進む方向を考える脳味噌さえシンクロしてはくれなくて。 相手は何を考えているのだろう。 理解できないことが予測できないことがこんなにも、こんなにも苛立たしいなんて知らなかった。 こちらは空虚に向ける苛立ちで埋め尽くされて進む道は見失ったというのに。 アルケインは今日もいつもと変わらない表情でグラスに注いだワインを揺らして眺めていた。 「どうか、しましたか?」 ふと、ヌーゴの視線に違和感を覚えたアルケインが首を傾げる。 ヌーゴは「いや実は」と普段通りを装っててきとうに言葉を並べ立てた。 「そのワイン実は昨日」 「なにしたんですか!」 「早い早い、まだなにも言ってない。なにもしてないし」 ワインのこととなると早すぎるくらい早い反応、いつものアルケインだった。 ふつり、苛立ち。 こちらはこんなにいつもとは違うのに。 このときのヌーゴはアルケインも自分と同じで平常通りを装っているだけかもしれないとは思い付かなかったし、思い付いたところでそれを見極める余裕は持ち合わせてはいなかった。 「じゃあなにをそんなに見てたんです」 「髪、伸びたなって」 「そうですか?」 余裕と冷静さを持ち併せていたところでアルケインの心理を探ることはヌーゴ以上に困難を極めるのだが。 のらり、くらり。 どちらもが取り繕って平常通りの言葉を交わす。 「切ってやろうか」 「ヌーゴさん器用ですし…やってもらってもいいかもしれませんね」 アルケインの返事にヌーゴの晒していない口元が弧を描いてにんまりと歪んだ。 じゃあ、と立ち上がって、座ったままのアルケインの背後に回りながら脇差しに手を添える。 歩む道が離れてしまう前に、さあ修正して今度こそ共に歩みましょう同一の歴史。 足を滑らせてはずれる事なんて赦しはしない。
髪伸びたね切ってあげようか、首ごと。
ズバッ。コロコロコロ……。 「なっ、なにするんですか!」 「手が滑った」 (足を滑らせない、だけに) さて。お主はどこを壊せば共に死んでくれるのか。 わからないのでまず頭から。 (共に死ねたらきっと同一になれる、多分)
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