ロクレキ(@ゼクト)





現パロ、フリーターと大学生。二人暮らし。
(なんかロークって居酒屋とかでバイトしてそう)



夕方から雲行きが怪しくなってきて、夕飯時には道行く人はみんな傘差して、深夜俺が上がるときにはもう気が滅入るような土砂降り。
天気予報も見ない俺は傘なんて持ってきてなくて、最寄りのコンビニでビニール傘でも買って帰ろうかとも思ったけど、そこまで行くだけでずぶ濡れだからやめた。
レキシがうちに居てくれたら、出掛けるときに声教えてくれたんだろうなとか考えて、ああ俺レキシがいなきゃなんも出来ないやと思ったら自分が馬鹿馬鹿しくなって、諦めて土砂降りの中へ飛び込んだ。
なんていったところでチャリだし、傘あってもこんな土砂降りじゃ意味ないしと自分に言い聞かせながら鍵を探す。
ケータイと財布は店からビニール袋を拝借してポケットの中。
同じところに自転車の鍵も入れたはずだがと探ったら袋の中に入っていて肩を落とす。
わざわざ出すのも面倒で歩いて帰ることにした。
別に、歩いて帰れない距離ではない。
極力濡れないように走るっていったって今更無駄で、雨は冷たいし風は寒いしで早く帰り着きたくはあったが雨を充分に吸ったコートは重たくて億劫だったから、大人しく歩き出す。
レキシは大学のサークルの合宿だとかで暫く家にいなくって、まだ2、3日は帰ってこなかったような気がして余計に気が滅入る。
帰っても誰もいない、寒い部屋、帰り着いてからやっとあっため始める浴室。
湯船でゆっくり休みたい、芯からじっくりあったまりたいなんて言えばまた暫く待たされて。
「あー、憂鬱」
とか言ってる間にうちの前なんだけど。
そう、バイト先からうちまではさして遠くない、どころか結構近いのだ。
俺の育ての親が俺たちのために借りてくれた結構綺麗なマンション、その三階角部屋。
エレベーターもあるのだがこんなぽたぽた雨水滴る状態で乗るのも悪い気がしてのろのろと階段を上がって部屋を目指す。
ざあざあと聞こえる雨音がまたうざったい。
レキシは好きだと言っていたけど、俺にはどうにも理解不能だ、今は特に。
家の鍵は他のポケットだったなと探りながらふとドアノブに手をかけると、あら不思議、ドアノブが回って。
え?と思って引いてみればあっさりとドアが開いて拍子抜け。
なんで?と首を傾げていると、リビングと玄関を仕切る扉が開いてレキシが顔を出す。
「あ、おかえり、ちょっと待ってて」
「え、あ、うん」
いないと思っていたレキシがいたというのは嬉しいサプライズだが、いないと思いこんでいたおかげていまいち理解がおいつかなくてただ首を傾げる。
「どうした?」
一度覗かせた顔をリビングに引っ込めていたレキシが、タオルを抱えて戻って来るなり、呆然としている俺に首を傾げる。
「まだ、帰ってこないと思ってた…」
タオルを被せられ、びしょ濡れのコートを脱がされながら俺が答えると、ため息。
「おまえがその日の天気予報なんて見ない馬鹿なのは知ってたけど、一緒に生活してる人の予定も覚えないほど馬鹿だったとは」
「ごめん」
まあそれも知ってたけどねとぼやくレキシに素直に謝れば、きょとんとした表情で返されて、俺は変なことでも言ったかと思う。
「あ、ん、と、調子狂うな…ったく」
レキシは少し俯いてそう呟くと、がしがしと自身の髪を掻き乱した。
今度は俺がきょとんとして見やると、さっさと濡れたもの脱いで風呂入ってこいと怒られる。
なんで怒られたのかはよくわからなかったが、これ以上機嫌を損ねるのもよくないと思い、素直に従う。
「着替えは出しておいてあげるから、それはあとで自分で片付けろよ」
「ああ、さんきゅ」
言い残して、俺の着替えを取りに行ったのであろうレキシは、なんとも言えない微妙な表情をしていた。
残された俺は素直に服を脱いで、床を濡らさないように一旦足先を拭いてっから風呂場へ向かった。


―雨の日だからか、調子が狂っていけない―


「なんかさ、誰かがうちで待ってるって、すっごい嬉しいことなんだなって、思ったよ」
「なんか、突っかかってこないおまえって気持ち悪い」


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