さ よ な ら(@英雄2)





『俺は、何度でも生まれ変わって、君に辿り着くと誓う』
『ふふっ、頼もしいですねぇ』
『あ、信じていないな』


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――あれから、とても長い時間が流れたように思う。
実際のところは、大したことはないのだろうけど。
重苦しい空気を纏うと途端、なんてことない日々が、長く感じてしまう。

何が僕をこんなに重く、心苦しくさせているのかといえば、遠い日の彼との記憶と、肩を並べて戦う少年の存在だった。
近々僕は、少年の敵になる。
このことはまだ少年には告げてはいないが、勘の鋭い彼のことだろう、気付いているのかも知れない。
そう思っても尚告げられないのはやはり、遠い約束があるからで。

少年が、かつて僕の愛した青年の生まれ変わりかはわからないけれど、ひどく似通った姿をしているのは確かで。
少年を裏切ることで、愛しい人を裏切るような気がしてしまって、言い出せないのだ。

彼は何度でも僕の元に来てくれるのだと言った。
それを、僕のほうから離れてしまうなんて、申し訳なくて、いっそのこと、連れて行ってしまえたらとさえ思う。
しかし、ことはそんなに単純ではない。

確かに『彼』の隣は僕にとって大切な場所だけれど、それよりもずっと、大切な場所が、僕にはあって。
そこはとても居心地がよくて、其処よりも『彼』を選ぶことなど出来ない僕は、彼の元を離れると決めたのに。
懐かしい場所を取り戻すのだと、決めたのに。

何故、彼にさよならも言えないのだろうか。
そして、僕がオルガ解放戦線を離れる夜、僕は誰にも何も告げないまま、きっとこの野営地をあとにするのだろうと思いながら、涙の零れそうになった瞳に蓋をした。


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