ロクレキ(@ゼクト)





※反国軍に普通にファロがいます
ドラマCDのちょっとあとくらい(ファロはジャックの心の中で生きてるうわなにするやめ)





レキシは頭がいい。
ただ単純に俺とは育ち(別に、レキシみたいな環境で育ちたかったとかそういうんじゃない、断じて)はもとより、頭の作り自体が違うんだと思ってた。
けど、別段そんなわけじゃなくて(そりゃ考え方や性格は環境によるものだろうけど)、レキシは学ぶことに対して真っ直ぐで貪欲(俺に対してもそれくらいの興味を持ってくれたらいいのに)なのだと、ファロの野郎(これがもうほんっと気に食わない奴!)が来てから、知った。

「ファロ、これは――」
ファロもただの騎士なんかじゃなくこれがなかなか博識で。
レキシの知らないことなんかも知っていたり(逆も然り)して、色々と発見やら何やらがあって、レキシはファロと話をしているときが、とても楽しそうだった。
「――だよ、だから―――」
俺にはわからない単語が飛び交う、真剣で、楽しげで。
それが、書物に向けてならまだ許せるけど(なんて言ってみるけど俺、書物にすら嫉妬しそうだ)、相手が人間じゃあ恋人としてはおもしろくない。
それでもその状況に口を挟まないで眺めているのは、レキシに好きなことをしてほしいっていう俺の優しさだ(ああ俺ホント優しい!)。
レキシは一度気になると止まらない性格で、それに関しては嬉しいことに俺のことも含まれる。
しかしそれはいい面ばかりじゃなく悪い面もあって。
俺が一言ここで不満を漏らせば、彼は俺のことを気にかけてくれるだろう。
しかし今度はそればっかりが気になって、他のことが手に着かなくなってしまう、そんなの俺は望んでないし、そこまでして束縛したいと思うほどガキじゃない。
そう、ガキじゃないんだ。
レキシだって、ファロだってそうだ。
ちゃんとわきまえてるし、どんなにひとつのことに没頭してるっていったって、レキシは俺を裏切るような奴じゃない。
俺が思い描く嫌な想像だって被害妄想の誇大妄想だってわかってるさ、わかってるけどそれでもやっぱり。
レキシとファロが、楽しげに話しているのは、見ていておもしろくない。
「はあ」
ため息くらい、ついたっていいよな。

「―――ク、ローク、…ロークっ!」
「うっ、わわ!なんだよ急にでかい声出して!」「何度呼んでもお前が答えないからだろう?」
「へ?何度も…?」呆れたように溜め息をつくレキシに、きょとんと首を傾げると、横でファロがくすりと笑った。
「なんだよ、笑うなっての」
「ふふ、すまない。君たちは仲がいいな、本当に」
「……っ」
むすっと睨み上げる俺に、ファロがあまりに穏やかに笑ってそう言うものだから、俺はそれ以上言えなくなって、気まずさに目を逸らす。
レキシは、もう、とひとつ溜め息をついて、テーブルに上半身を乗せて、俺の顔を覗き込むようにして(ああ近い、キスしたい、けど今したら続き喋ってくれない)口を開く。
「これから薬草を探しに森の奥、入ろうと思って。ついでに夕飯のおかずに山菜でも探そうかって。一緒に行くか?」
「もっ、もちろん!」
「あ…、ははっ。頼もしいな」
レキシの問いに、がたんと音を立てて勢いよく椅子から立ち上がって答えた俺に、レキシは一瞬驚いた表情を浮かべてから、ふわりと笑った。
「おう!」
「頼りにしてるよ、荷物持ち」
「えっ…?」



聞き捨てならない台詞(という名の爆弾)を投下したあと、普段なら『冗談だよ』と笑うレキシがそれを言わなかったから、きっと本気なんだろう、とか。
実際、採取した薬草や山菜を入れる籠は俺が持っちゃってるんだよな、とか。
一緒にって言った割には俺のこと気にしないで(レキシがあまりに気にしないものだからファロのほうが気にしてやがらあ)さっさと行きやがって、とか。
言いたいことは色々あったけど、別に文句は言わないで着いていった。
どうせはぐれたって、レキシの行きたい"森の奥"ってのはわかってるから問題ないし。
採ったって俺が居なきゃあ(っていうか籠がなきゃ)持ち帰れねぇから本当にに俺を置いていくってこともないだろうし。
それよりほら、ファロお前ちらちらこっち見てないでレキシに着いて行かないと、お前は迷うぞ。
わざわざ探しに行くのなんて断じて御免だからな。
と、少し離れたところからファロを睨み上げると、ファロは困ったように眉をハの字にして、前に向き直るなりペースを緩めないレキシを慌てて追いかけていた。
レキシの頭の中はきっと、その目的の薬と、今日の夕飯のメニューでいっぱいなんだろう。
少なくとも夕飯の支度が済むまではレキシの興味が俺には巡ってこないんだろうな(ま、慣れてるけどさ、そんなの)と溜め息をついて、目についた食えるか食えないか怪しい実(少なくとも俺の直感は食えると言っている)をもぎ取って、籠に放り込んだ。

獣道。
それも、辛うじて認識できる程度の。
慣れない人間が踏み込めば直ぐに迷い込んでしまう森の中。
不意に開ける森林、目の前に広がるのはキラキラ光る水面。
この反国軍の中でも、知っている奴は少ない(まあ、結構頻繁に拠点を移動してるから知る機会自体無いのがほとんどだけど)湖だ。
「遅いぞ、ローク」
「お前が早すぎんだよ、レキシ」
言ってる間に、構わずどさりと放り込まれる薬草。
「早っ」
「だからお前が遅いんだって言ったろ」
足元の草に視線を落としながらレキシは言う。
もう反論するのも馬鹿馬鹿しくなって、はいはい俺が悪かったよと降参のポーズをとると、バカかと額を小突かれた。
「そういやファロは?」
「湖沿いに少し見てくるって」
「へぇ」
「まあ、そう遠くへは行かないと思うけど」
「そりゃな」


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