ヌゴアル(@英雄0)





ねがいごとひとつだけのずっとまえのはなし。
※ちょっとぐろ





死ぬことなんて、恐れるに足らないことだ。
この大陸に生きている限り、いつあっけなく死んでしまうとも限らないのだから。
戦の前線に立つ身なら尚更。
ただ、傍若無人で有名な自国の国王にも、多少の恩義はあるため彼の勇士を見届けないまま逝くというのは、少々心苦しくはあるのだが。
まあ、所詮その程度である。
死ぬことに恐怖しないようになってから、この大陸で純粋に生き残ることを諦めてから、恐怖そのものを感じることもなくなっていた。
いや、自分の些細な秘密をおもしろ半分に暴こうとしてくる王や同僚にはたまに恐怖するが。
本当に、自国の、城にいるときが一番安心できない。
イタズラ好きの彼彼女の好奇心は本当に恐ろしい。
それはさておき――いや、置かないで少し彼らのことも考えておこうか。
もうすぐ、きっとあと幾刻もしないうちにこんなことも考えることすら出来なくなるのだから。

そう考えるヌーゴは今、平原の真ん中で横たわっていた。
周囲はあかい肉を、血を、内臓を、さらけ出した死体が転がるだけである。
そこにはもう、ヌーゴ以外の生命は存在していなかった。


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