短篇 | ナノ



迷子になった時の対処法 (2/2)



「呼べば、きっと来てくれる」

あの後も何度か叫び、杞都は高杉が見付けてくれるのを一点の曇りも無く信じて待っていた。

「晋助は私のこと大好きだもん」

私が晋助のこと大好きなのとおんなじくらい

「よし、もう一回」

ぱちんと手を叩いて杞都は自分に気合いを入れる。
そしてその小さな身体で可能な限り大きく息を吸い込み、変わらぬ笑顔で少女は吼える。

「晋助ェェェェェェェェェェェェェッッ!!!」

幾度吼えようと一向に衰える事を知らない、待ち人を呼ぶ声。
自分は此処に居るのだと知らしめる様に、早く見付け出してくれと求める様に、杞都は吼えた。


すると、今まで何の反応も無かった辺りに新たな音が混ざる。
それは、タタタタタッと素早く地面を蹴り走ってくる小さな一対の足音だった。

それが聞こえた途端杞都は顔を輝かせて切り株から飛び降り、待ちきれないという様に両腕をぱたぱたと忙しなく振る。

「杞都!」

「晋助!」

そして草を掻き分け現れた、待ち望んだ姿に杞都は我慢出来ず思い切り飛び付いた。

「っこのバカ!」

自分の胸に飛び込んできた杞都を受け止めながら、高杉は上がった息を整える事もせず抑えた声で叱りつける。
二人でそのまま切り株に腰を下ろし、高杉はやっと息を落ち着けた。

「心配させんじゃねーよ、バカヤロー」

「ごめんなさい」

自分を強く抱き締める高杉の腕にひどく安心し、杞都も高杉の背に回した腕にぎゅっと力を込める。

「つーかお前、何であんなバカデカい声でおれの名前呼んでたんだよ」

微かに頬を上気させて少し呆れた様に訊く高杉に、杞都は一瞬キョトンとする。
しかしすぐニッと笑って答えた。

「晋助ならきっと見付けてくれると思ったから!」

「…何で」

「だって、晋助私のこと大好きだもん!」

「っな!?お、前…!」

カッと一気に顔を赤くして口をぱくぱくさせる高杉。
しかし杞都はそんな高杉に構わずニコニコと話し続ける。

「私が晋助のこと大好きなのとおんなじくらい、晋助も私のこと大好きなんだよって言ったら、だったらきっと見付けてくれますよって先生も言ってた」

だから、信じてずっと待ってたの

「晋助が来てくれるって思ったから、怖くなかったし、寂しくなかったんだよ」

全部全部、晋助のおかげ
そう言って嬉しそうに笑う杞都に高杉は何も言えなくなり、溜め息混じりにぐしゃぐしゃと頭を掻いてさっと背を向けた。

「晋助?」

「さっさとかえるぞ。みんなお前さがして走り回ってんだから」

「…ん!」

ぶっきらぼうに言って振り向かぬまま手を差し出す高杉に、杞都は満面の笑みを浮かべて自分より少しだけ大きなその手をきゅっと握った。






「晋助ェェェェェェェェェェェェェッッ!!!」
「…ッお前は何歳(いつ)まで迷子になってんだ!」
「だって、気付くと知らない場所に居るんだよ。私悪くないもん」
「だから俺から離れるなっつっただろうが!」
「うぅ…ごめんなさい」






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ちょっとやってみたかっただけです
主人公の奇抜な服装にも特に意味は無い←

書き終わってから
コレ3zでもいけたよなあ
とか思ってみたり



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