言の葉遊び
「いつも思うんだけれど、」
「あ?」
いつもの様に窓枠に腰掛け三味線を奏でる高杉を、杞都は愉快そうに眺めている。
「晋助って本当に彼女のことが好きなのね」
唐突な言葉に驚くでもなく、高杉はただ可笑しそうに笑った。
「そう思うか?」
「ええ、だって一緒に居ると凄く楽しそうにしているでしょ?」
微笑みながら返された答えに喉を鳴らす高杉。
そして切れ長な目をスッと細めて懐かしそうな顔を見せる。
「もう付き合いも短かねぇしなァ」
「そうね…」
思い返す様に言う高杉を見て杞都は微笑んだ後、それを少しだけからかう様な笑みに変えた。
「でも、あの子と一緒に居る時間の方が長いんじゃないかしら?」
杞都のその言葉に高杉は小さく声を上げて笑い、違い無ェ、とあっさり肯定する。
「あの子とは何処へ行っても、ずっと一緒に居るじゃない」
「傍に居るだけで落ち着くからなァ」
「あらあら、それは惚気と受け取っていいのかしら?」
彼女が泣くわよ、とクスクス笑う杞都に高杉はどうだかな、とあまり興味が無さそうに返した。
「まァ、もし寂しがる様ならテメーが慰めてやってくれや」
「嫌よ、私そういう趣味は無いもの」
冗談っぽく言われた頼みを杞都は笑顔のままさらりと断り小さく肩を竦める。
そんな杞都に高杉はまた笑った。
「クク…冷てーこった」
「何股もかけてる晋助には言われたくないわね」
中身の無い非難に中身の無い嫌味で答える。
互いに目があってなんとなくクスクスと笑いあった。
「テメーも人の事言えねーんじゃねェのか?」
「あら、どうして?」
高杉の問いに、杞都はよく分からないという顔をする。
疑問を表す様に首を傾げると、黒髪と共に簪の飾りが小さく揺れた。
「この間新しい男連れて来てたろうが」
「そうだったかしら?」
「ああ」
二人な
おやおかしいなと言う様にとぼけてみせる杞都に高杉はクツクツと笑う。
「私は本命はちゃんと別扱いにするもの」
「そうだったか?」
「勿論。そこは譲らないわ」
杞都はとぼけていた割りにあっさりと認め、腰にさした脇差しの柄を手持ち無沙汰に指先で撫でながら開き直った。
「本命は一番大切にするし、余程の事が無い限り移り気したりしないもの」
「その本命の他にも何人か囲ってる奴が言うじゃねーか」
杞都はにこりと笑うのみで、それに関しては否定しなかった。
「だが偶には他の奴にも構ってやらねーと寂しがるだろうよ」
「その時は晋助が慰めてあげて頂戴」
「生憎、俺ァ既に手一杯だ」
他をあたれ
そう言う高杉に冷たいのね、と中身の無い非難を送ればテメー程じゃあるめー、と中身の無い嫌味が返ってきた。
「いやはや、お互い阿呆とは思うけれど」
「中々どうして、やめられねーなァ」
高杉の機嫌の良さを示す様に、三味線が楽しそうに即興の曲を奏でる。
「彼女より私の方が綺麗に歌える」
「アイツより俺の方がテメーに似合いだ」
「あの子より私の方がキスが上手いわ」
「奴より俺の方がよっぽど強いぜ?」
「だからもう、」
「こんな遊びは終ェとしようや」
「こんな遊びは終わりにしましょう?」
言の葉紡いで遊ぶより
もっと楽しい事をしよう
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お互いの持ち物を擬人法っぽく表しただけ
因みに
彼女→三味線
あの子→煙管
アイツ→簪
奴→脇差し
「お互いに遊び始めたはいいけれど言っているうちに段々と嫉妬心が芽生え、物相手だと分かっていても耐えられなくなり結局お開きになる
毎回そうなると分かってはいるが普段は見られない嫉妬する相手を見られるので中々止められない」
そんな二人を書きたかったんです←
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